2004 Fiscal Year Annual Research Report
シルクセリシンによるスーパーハイブリッド徐放薬物伝達システム開発の基盤研究
Project/Area Number |
16591231
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
隈崎 達夫 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10089675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲本 忠志 群馬大学, 工学部, 教授 (00016643)
林 宏光 日本医科大学, 医学部, 助教授 (70267201)
高濱 克也 日本医科大学, 医学部, 助手 (50366689)
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Keywords | 絹タンパク / オリゴペプチド / 抗酸化作用 / DDS |
Research Abstract |
従来、絹は主に衣料用として用いられてきたが、最近、絹タンパク質に種々の薬理作用があることが見出され、食品、化粧品等への応用展開が図られている。例えば、繭から抽出されるセリシンに抗酸化作用、皮膚癌抑制作用などがあることが報告されている。 われわれは、本研究を開始する前に、絹タンパクを特殊処理し、新しい変性絹抽出水溶液の作製に成功し、この抽出液が肌荒れ等に悩む人々の皮膚の改善に有効であることを見出し、ある程度の成分分析にも成功した。すなわち、本液を凍結乾燥させ、不揮発成分を詳細に分析した結果、アミノ酸組成は従来知られていなかった特異なアミノ酸を含んでいること、分子量は822DL付近でピークを示したことにより、5-12量体のオリゴペプチドと推測された。 このような特異なアミノ酸組成を有する抽出液成分が、新規なDDS開発素材として有望と考え、本研究においては、そのための基盤的研究を行うことを目的とした。まず、これまでの分析結果を確かめるために、質量分析、赤外線吸収、C-13固体高分解能NMRスペクトル等による分析を行い本物質の物理化学的特徴を明らかにした。さらに紫外線吸収スペクトルも上記の結果と一致するものであった。 ついで、本物質の生物学的特性を解明すべく実験を行い、現在に至っている。マウスの実験では、アスコルビン酸と同程度の抗酸化作用を有し、実験腫瘍の発生を抑制することが分かり、現在そのメカニズムの解明を急いでいる。本物質は低分子量のペプチドであることから、皮膚や粘膜より吸収されやすく、その生物学的効果は従来の絹タンパクより顕著であると考えられる。すでに安全性についての試験も終わり、本物質の特性を活用して、次年度の前臨床試験を進め、新しいDDSの開発に結び付けたい。
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