2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胃癌腹膜播種形成におけるケモカインとそのレセプター発現の臨床的意義
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16591303
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安本 和生 金沢大学, がん研究所, 助手 (90262592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 豊 金沢大学, がん研究所, 助教授 (10179541)
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Keywords | 胃癌 / 腹膜播種 / ケモカイン / CXCR4 / CXCL12(SDF-1a) / 転移の臓器選択性 |
Research Abstract |
ヒト胃癌の腹膜播種形成におけるケモカインの関与ならびにその役割を明らかにするために、 <方法ならびに結果>1、ヒト胃癌継代細胞株数種を用いてケモカインレセプターの発現をRT-PCR法兔疫細胞染色法を用いて検討した。腹膜播種指向性細胞株において選択的にCXCR4レセプターを高発現していることが判明した。CXCR4高発現胃癌細胞株を用いてその唯一のリガンドであるCXCL12(SDF-1a)に対する生物活性(遊走能・増殖能)の有無を検討した。リガンドの添加刺激に対し遊走能ばかりでなく増殖能をも有することが判明した。それら活性に対し、CXCR4のモノクローナル抗体投与は、生物活性を有意に抑制した.さらに、細胞内のSurvival signalsとして知られるAktならびにERKのリン酸化をも誘導することがウエスタンブロット法にて判明した。3、ヒト臨床検体を用いた検討では、腹膜播種症例と肝転移症例の進行再発胃癌症例の胃原発巣におけるCXCR4の発現を比較検討した結果、癌性腹膜炎を発症した症例群の原発巣では、肝転移を発症した症例群に比して有意差をもってCXCR4の発現が亢進していた。また、転移の臓器選択性を検討する目的で胃癌転移の好発臓器である肝臓・腹膜・リンパ節・胃粘膜におけるCXCL12(SDF-1a)の発現をRT-PCR法と免疫組織染色法を用いて検討した結果、大変興味深いことに、腹膜組織において恒常的なCXCL12(SDF-1a)の高発現が確認され、さらに癌性腹水中には高濃度のCXCL12(SDF-1a)が存在することが判明した。4、今後の臨床治療への応用を図ることを目的に、まずCXCR4を高発現するヒト胃癌細胞株をヌードマウス腹腔内に移植し、腹膜播種モデルを作製した。この系にCXCR4阻害剤(AMD3100)を腹腔内投与し、癌性腹水生成の有意な抑制と、腹膜転移結節の明らかな縮小を確認した。<結語>臨床的に胃癌腹膜播種再発を起こしやすい低分化腺癌や印環細胞癌は、選択的にCXCR4レセプターを高発現し、腹膜に高発現する唯一のリガンドCXCL12(SDF-1a)を介して腹腔内に遊走、腹膜上で増殖し、癌性腹水成立とともに腹水内においても増殖し、腹膜播種を形成・進展させていくことが強く示唆された。CXCR4レセプター阻害剤の腹腔内投与による腹膜播種抑制は、予防薬の開発という新たな分子標的治療として新しい治療コンセプトとなりうる可能性がある。
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Research Products
(3 results)