Research Abstract |
本年度はラット肝硬変10%肝切除モデルに対し昨年調整したヒトtruncated typeII TGF-βreceptor(TβTR)発現アデノウイルスベクター(AdTβTR)およびラットhepatocyte growth factor(HGF)発現アデノウイルスベクター(AdHGF)を投与し治療効果を検討した。 III.肝硬変10%肝切除モデルに対する治療実験 Sprague-Dawley系雄性ラットに対しdimethylnitrosamine(DMN)(10μg/g体重)を週3回連日腹腔内投与を3週間行い,肝硬変を作成した。DMN最終投与より5日目に開腹し,左側葉及び尾状葉(10%)を切除し,(1)AdLacZ(対照群)(5.0×10^8pfu),(2)AdTβTR(5.0×10^8pfu),(3)AdHGF(5.0×10^8pfu),(4)AdHGF+AdTβTR(併用群1:1,総量1.0×10^9pfu)を各群とし門脈内投与した。投与後7日目よりDMN(10μg/g体重)を週3回連日腹腔内投与2週間行い3週目に屠殺し,肝臓摘出及び採血を行い治療効果を検討した。 肉眼所見にて併用群では肝表面及び辺縁が他群と比較し著明に平滑であった。HE染色による病理学的評価にて併用群では出血性壊死及び炎症性細胞浸潤からなる肝組織障害が対照群及び単独群に比べて軽度であった。Azan-Mallory染色による病理組織学的評価にてAdHGF群,併用群では線維組織の減少が著明で,併用群で最も線維化の改善が認められた。肝組織中hydroxyproline含有量において対照群,AdTβTR群に対し,AdHGF群,併用群で有意に低値を示した。血清ALT値において他群と比較し,併用群で有意に低値を示し,最も改善を認めた。PCNA免疫染色より算出したPCNA labeling indexでは対照群,AdTβTR群に対し,AdHGF群,併用群で陽性肝細胞数の有意な増加を認めた。以上の結果より肝硬変モデルに対する肝切除実験において対照群と比べてAdTβTR群で血液生化学検査の改善を認め,AdHGF群で組織学的な線維化抑制と肝細胞増殖促進効果を認めた。AdHGFにAdTβTRを併用することにより線維化および血液生化学検査がさらに改善した。 IV.肝硬変10%肝切除モデルに対する治療実験における生存率の検討 実験IIIと同様にして,肝硬変10%肝切除モデルを作成し,(1)AdLacZ(対照群),(2)AdTβTR,(3)AdHGF,(4)AdHGF+AdTβTR(併用群1:1)を各群(各n=10)とし門脈内投与した。投与後7日目よりDMN(10μg/g体重)を週3回連日腹腔内投与を長期間行い,生存率について検討した。その結果,AdHGF群及び併用群において生存率の改善が認められた。
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