Research Abstract |
(目的) がんの治療戦略において,がん化やがんの悪性形質に関連する分子機構が明らかとなり,がん細胞で特異的に変化している分子を標的とした薬剤の開発が試みられ,分子標的治療と呼ばれている.ZD1839,(イレッサ)は,EGFR(epidermal growth factor receptor)の特異的阻害剤として開発され,肺癌治療に応用されている分子標的治療薬である.ZD1839の作用機序は,(1)angiogenesisの阻害,(2)apoptosisの誘導などが報告されている.我々はZD1839が強力なテロメラーゼの阻害効果を有し,低用量でテロメアの短縮・それに引き続く細胞死を引き起こすことを明らかにした.テロメラーゼを標的とした治療戦略は,テロメラーゼ活性を正常体細胞レベルまで低下させ,分裂回数とともにテロメア長の短縮を誘導することが基本原理である.その結果,テロメア長が一定の長さより短くなると,細胞は老化し,やがてapoptosisに陥る.つまり,選択的に腫瘍細胞に老化を誘導し,死に導く老化誘導療法と言える.本研究課題では,ヌードマウス移植可食道癌細胞株を用いて,ZD1839低用量長期投与による,(1)安全性,(2)抗腫瘍効果,(3)テロメラーゼの阻害効果とそのメカニズムについて,in vivoの前臨床試験を行う. (結果) 分子標的治療薬であるZD1839が食道癌培養細胞株に対してEGFR-MAPK-ESTを介してhTERTの発現を低下させ,テロメアの短縮誘導に有用であることが明らかとなった.現在論文をrevise中である.悪性膠芽腫では逆にhTERTの過剰発現を生じた現象に関しては,EGFR-MAPK-ESTからシグナルのスイッチングが生じAP-1 siteを刺激して逆に過剰発現を誘導していることを明らかにした. (考案) ZD1839は重層扁平上皮癌に対してはhTERTの活性抑制効果による,抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった.
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