Research Abstract |
これまで高度進行再発癌に対する新しい癌集学的治療として確立するために我々は抗癌剤及び腫瘍細胞免疫療法の異なる機序を利用した骨髄非抑制性で治療耐性を生じにくい癌化学細胞免疫療法を提唱し,細胞免疫療法(高度先進医療)と化学療法を併用による臨床治療を試験的に行った,本法の副作用発生は従来の標準的化学療法よりも低く,長期的治療が可能であり,免疫細胞療法と化学療法との相互的な補助効果が示唆された. 本年度は臨床的には乳癌の難治性症例に対し,抗腫瘍免疫細胞(CTLなど)と抗腫瘍抗体トラスツズマブとの併用による臨床試験(Phase I/II)を開始した.臨床投与は免疫細胞の癌局所注入,動注などを施行した。これまで治療した14例(ハーセプチン併用Her2+:7例; Her2-:7例)は平均治療期間は4.8ヶ月であり,その中著効例(PR):不変例(NC):無効例(PD)は1:6:7であった.また,5例において腫瘍マーカーの減少,6例は胸腹水の減少を認めた.治療の有害事象は軽度な発熱,下痢,循環器症状であった.基礎解析結果では(1)細胞分画とT cell clonality:2週間混合培養により誘導リンパ球の各分画(%)はハーセプチン添加培養群ではCD3^+CD8^+T cell (CTLprecursor)が有意に増加し,CD3^+CD4^+T cellやNK (CD56^+CD16^+)は変化がなかった.培養リンパ球のクローン化は培養21日目にTCRβ chain PCR法により解析し,6例中に3例(Her2+/-:2/1)を認めた.(2)ADCC活性とサイトカイン分泌量:自己腫瘍細胞に対するADCC活性はHer2+3例中2例において増強された.ハーセプチン添加群では培養液中TGF-βの産生量が有意に減少した.乳癌患者の誘導活性化自己リンパ球において、ハーセプチン処理によりCTL優位が見られ、ADCC活性が増強された.また,培養液中のTFG-β分泌量は有意に抑制された。臨床的にはハーセプチン併用免疫細胞療法では軽度な有害事象はを認めたが,化学放射線療法抵抗性のHer2+症例においても腫瘍縮小,マーカー及び胸腹水減少などの臨床反応性が見られた.従って,両者併用することにより特異的免疫細胞療法とハーセプチンとの相乗効果が得られ,難治性乳癌の成績向上に寄与することが示唆され,更なる臨床試験などによる検証が待たれる. また,我々はさらにその理論的根拠となる特定な抗癌剤と細胞免疫療法との相乗的効果を証明するための基礎的解析を行い,プロテアソーム阻害薬はプロテアソームというこれまでと異なる分子を標的にした新しい機序の薬剤Bortezomibにより免疫活性化分子TRAILを介した各種消化器癌のアポトーシス感受性が亢進することがわかった。更に,現在,臨床有効例の患者末梢血リンパ球を用いて,自己癌細胞との2週間リンパ球腫瘍混合培養(MLTC)により自己活性化リンパ球を誘導し,in vitroで各種抗癌剤と様々の組み合わせで自己腫瘍細胞やtarget tumor cell lineに添加投与を行う.両者の相互作用についてリンパ球の性状や腫瘍細胞傷害性をFlow cytometryや51Cr release assay等にて評価するほか,抗癌剤の抗腫瘍作用による腫瘍細胞のapoptosis, cross-presentationによって抗原提示細胞(APC)の抗原提示能の変化や免疫細胞の抗腫瘍効果の増強などについても解析を開始している。
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