2005 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌に発現するDNAM-1リガンドの腫瘍免疫における基礎的研究
Project/Area Number |
16591380
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田原 聡子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助手 (20360589)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 和子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (00302406)
|
Keywords | DNAM-1 / CD226 / CD155 / CD112 / 腫瘍拒絶 / CD8陽性T細胞 / NK細胞 / メモリーT細胞 |
Research Abstract |
[目的]DNAM-1は、細胞傷害性T細胞(CTL)およびNK細胞に強く発現しており、腫瘍細胞に発現しているリガンド(CD155またはCD112)を認識して接着し、腫瘍細胞に細胞傷害を誘導することがヒトの系で明らかにされている。本研究では、抗腫瘍免疫応答におけるDNAM-1の生理的な役割を解明するため、マウスin vivoの腫瘍拒絶の実験系を確立し、DNAM-1とそのリガンドを介した腫瘍の拒絶に機能する主要なエフェクター細胞を同定した。 [方法・結果]同系マウスに腫瘍を形成する腫瘍細胞株(RMA)または、RMAにmouse DNAM-1リガンド(mouse CD112またはmouse CD155)を遺伝子導入したトランスフェクタント(RMA-112またはRMA-155)を同系マウスに皮下接種し、マウス生存率を検討した。RMAを接種されたマウスは、約50日が経過すると生存率0%となるのに対し、RMAにDNAM-1リガンドを強制発現させると腫瘍の生着が阻害され、生存率が80%となることを見い出した。この現象は、申請者が樹立した抗DNAM-1モノクローナル抗体(TX42)を投与することで完全に阻害されたことから、腫瘍の拒絶にはDNAM-1が機能していることを明らかにした。次に、DNAM-1を介した腫瘍の拒絶に機能する主要な細胞を同定することを試みた。マウスに抗CD8または抗NK1.1抗体を腹腔内投与してCD8陽性T細胞またはNK細胞が消失したマウスを作製し、RMA-155またはRMA-112を皮下接種した。これらの腫瘍は正常個体では生着できずに拒絶されるのに対し、NK細胞を消失させた個体では生存率が40%に低下することから、DNAM-1を介した腫瘍の拒絶にNK細胞が部分的ながら関与していることを明らかにした。それに対し、CD8陽性T細胞を消失させた個体は腫瘍を拒絶できず、生存率が0%となったことから、DNAM-1を介した腫瘍の拒絶にCD8陽性T細胞が主要なエフェクター細胞であることを明らかにした。CD8陽性T細胞が主要なエフェクター細胞であることから、メモリーT細胞の誘導について検討した。CD155を介して腫瘍(RMA)を拒絶したマウスに、70日後、DNAM-1リガンドを発現していないRMAを接種したところ、DNAM-1リガンドの発現がないのにも関わらず腫瘍の拒絶が観察された。このことは、DNAM-1とそのリガンドを介して腫瘍抗原特異的なCD8陽性メモリーT細胞が誘導され、2次感作の際には、DNAM-1リガンドが存在しなくても効率よく腫瘍に対して細胞傷害活性を誘導することを意味している。 [結論]以上の結果より、CTLやNKは、DNAM-1を介して腫瘍に発現するDNAM-1リガンドを認識して接着し、活性化することで腫瘍を傷害する。DNAM-1は、腫瘍抗原特異的なCTLを効率よく誘導し、その結果、腫瘍抗原特異的なメモリーCTLを効率よく誘導するという生体にとって重要な機能をもつことを明らかにした。
|