2005 Fiscal Year Annual Research Report
タイプII代謝型グルタミン酸受容体刺激による脳保護効果の検討
Project/Area Number |
16591436
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
杉田 正夫 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70235886)
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Keywords | グルタミン酸 / 代謝型グルタミン酸受容体 / 脳虚血 / 脳梗塞 / 遅発性神経細胞死 / 神経再生 / DCG-IV / BrdU |
Research Abstract |
興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸は、脳虚血後の神経細胞障害に深く関わっている。その代謝調節型受容体を介して、神経の可塑性や遅発性神経細胞死に関与していることが示唆されている。タイプII代謝型受容体(mGluR2)は前シナプスに存在し、これが活性化されることによりグルタミン酸のシナプス終末からの放出を抑制し神経細胞保護作用をもたらす可能性が期待された。 昨年、この研究において、局所脳血流遮断モデルを用いて急性期実験を行い、脳梗塞を減少させるかを検討したが、mGluR2アゴニストであるDCG-IV(5nM-50μM)の微小灌流によって脳梗塞体積の減少は認められなかった。今年度は、一過性前脳虚血モデルを用いた海馬における遅発性神経細胞死の検討を行った。 【対象と方法】動物モデルはSD rat(280-350g)を用いた。ハロセン麻酔下に両側内頚動脈を露出し、脱血のために頚静脈を確保してカニュレーションを行った。 頭部にはグルタミン酸測定のため海馬に定位的に微小灌流カニューレを挿入した。前脳虚血は両側内頚動脈の血流遮断とともに脱血により血圧を50%にして誘導した。検討対象は5群に分け、前処置としてDCG-IV(A;100fmol/kg, B;1pmol/kg, C:10pmol/kg, D;100pmol/kg)およびコントロール群;salineを脳室内投与し、5分間の脳虚血負荷を24時間後に行った。この際、血圧、体温、脳内グルタミン酸濃度の測定を行った。その後4日間はfree food and water accessとし、再び全身麻酔下に4%パラフォルムアルデヒドにて灌流固定を行い、脳を摘出した。摘出した脳をビブラトームにて100μ厚の切片として、H&E染色にて神経細胞の脱落状態およびBrdU染色にて神経再生の状態を検討した。【結果】1nmol/kgのDCG-IV脳室内投与では痙攣を生じ、術後1日以内に死亡した。検討対象とした群では投与中、投与後の生理学的パラメータには明らかな異常は生じなかった。脳内のグルタミン酸濃度は微小灌流法では各群間の有意な相違は認められなかった。微小電極灌流法ではこのモデルでの記録に成功していない。遅発性神経細胞死は抑制される傾向にあり、神経再生の増加を認めるが、個体数を追加して再現性を検証中である。
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