2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナル伝達における蛋白質分解系による骨肉腫増殖、転移抑制の検討
Project/Area Number |
16591500
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 協司 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50325784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横内 雅博 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (80359976)
小宮 節郎 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30178371)
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Keywords | 骨肉腫 / 細胞内シグナル伝達 / 蛋白分解系 / ビスホスホネート / 増殖抑制 / c-Cbl |
Research Abstract |
調査したヒト骨肉腫細胞株すべてにおいて、受容体型チロシンキナーゼであるEGFR, PDGFRの発現を認め、ligand刺激により骨肉腫細胞株の細胞内総蛋白のリン酸化、及びERK IIのリン酸化の亢進を認めた。更にbinding assayではGrb2,PI3kinase, Cblといった細胞内シグナル伝達因子が刺激によりリン酸化され、受容体と結合し複合体を形成することが確認された。これらのことにより、他の癌腫と同様に骨肉腫細胞においても基本的なシグナル伝達は正常細胞と同様に動いていると考えられた。しかし血清非存在下における細胞内総蛋白のリン酸化は、正常細胞株に比べ明らかに亢進しており、骨肉腫細胞におけるシグナルの異常亢進の存在が示唆された。我々はこの点に注目し、骨肉腫におけるシグナルの異常亢進を細胞内抑制因子により制御できるかを遺伝子導入により検討した。E3 ubiquitin ligaseであるCblを骨肉腫細胞株へ導入しwestern blot法により細胞内蛋白のリン酸化を調べた。その結果CblはEGFR, PDGFRと刺激依存性に結合しユビキチン化を促進すること、更に受容体のリン酸化を早期に終結させることが明らかとなった。しかしこのシグナル抑制効果は直接に骨肉腫の増殖停止には結びつかず、増殖抑制効果はあるものの骨肉腫細胞の増殖はゆるやかに認められた。またアポトーシスの促進は著明ではなく、マウスを使用した動物実験でも肺転移の抑制効果はあきらかではなかった。このためc-Cblの遺伝子導入のみでは実際の臨床応用に結び付けていくことは困難と考えられ、シグナルの下流に位置し細胞増殖に重要な役割をもつRasの抑制効果をみるためにビスホスホネートの効果を調べた。その結果ビスホスホネート投与により骨肉腫細胞の細胞死が著明に亢進され、Rasの抑制が骨肉腫に対し有効な治療法となり得る可能性が示された。
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