Research Abstract |
局所麻酔薬は神経線維膜に存在するナトリウムチャネルに作用して活動電位の伝播を阻害し,効果を発揮する。ナトリウムチャネル阻害効果は,細い線維から効果が現れると考えられてきた。すなわちB, C, Aδ,Aγ,Aβ,Aα線維の順に麻痺すると考えられてきたが,リドカインではAδ,Aβ,C線維の順に効果が現れるとの意見がある。また,長時間作用性局所麻酔薬であるレボブピバカインの低用量では,Aδ,C線維などの感覚神経の阻害が顕著で,Aα線維などの運動神経の阻害は軽微であることが,硬膜外ブロックの動物実験でわかっている。この研究の目的は,分離神経ブロックを明確にして,局所麻酔薬の無痛分娩に対する適切な使用法を開発しようとするものである。 ラットにペントバルビタール麻酔を施し,気管切開をして人工呼吸を施した。頸静脈,大腿動脈にカテーテルを留置し,坐骨神経を露出して刺激電極を装着し,さらに坐骨神経周囲に薬物を投与できるようにした。骨盤を脳定位手術装置に固定して椎弓切除術を行い,脊髄を露出した。顕微鏡下に前根と後根からできるだけ細い線維を1本ずつ取り出し,電極に装着した。刺激装置を用いて坐骨神経を刺激して,線維束シングルユニット信号を取り出した。pH7.0に調整した0.025,0.05,0.1,0.25%リドカイン溶液を坐骨神経周囲に投与し,各種線維のリドカインに対するED50を求めた。 平成16年度は,実験モデルの完成を目的とした。ほぼ完成し,対照とするリドカインのデータが得られているが,神経線維の中でもっとも細いC線維のシングルユニット信号の取り出しが難しく,改良を重ねながら実験を進めている。間もなく本格的なデータの収集ができる予定である。
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