2004 Fiscal Year Annual Research Report
大脳基底核におけるシナプス可塑性と虚血耐性に対する吸入麻酔薬の影響に関する研究
Project/Area Number |
16591563
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西村 欣也 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80164581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蕨 謙吾 順天堂大学, 医学部, 講師 (30311989)
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Keywords | 吸入麻酔薬 / Patch clamp / マウス線条体 / 虚血耐性獲得現象 |
Research Abstract |
今日、全身麻酔薬は虚血に対する脳保護作用を有しているではないかと言われ,様々な動物を用いて研究が行われている。とくにげっ歯動物ではよく実験されているが,その上で吸入麻酔薬にも虚血に対する脳保護作用が検討されin vivoでの実験系が報告されている。我々は虚血負荷に対する神経細胞の電気生理学的変化を観察し,吸入麻酔薬イソフルランおよびセボフルランの虚血耐性効果を検討した。 方法として,C57BL/6Jマウス(日齢:14-28日)に対してエーテル麻酔下に脳を摘出し,脳スライス標本(250-300μm)を作成した。その後人工脳脊髄液(細胞外液)を還流しながら顕微鏡下に線条体の投射ニューロンであるMS(medium spiny)ニューロンに対してwhole-cell patch clampを行い,current clampモードによりその静止膜電位(RP : Resting Potential)を観察した。また,虚血負荷として細胞外液中の酸素およびグルコースの代わりに窒素、スクロースを含む細胞外液を使用し,in vivoにおける虚血環境を作成した。 その結果であるが,マウスMSニューロンでのRPは約-80mVであり,虚血負荷によりそのRPは徐々に上昇する。その後,4.5分間にわたる虚血負荷にでは非可逆的な経過をとり,最初のRPに戻ることは稀であった。しかしながら,細胞外液にイソフルランまたはセボフルランを添加した状態で同様の実験を行ったところ,5分間という比較的長い虚血負荷にもかかわらず,RPは上昇するものの多くの症例で最初の値近くまで戻ること(可逆性)が観察された。 今回の実験により吸入麻酔薬は強力ではないが,虚血負荷による脳神経傷害となるひとつの機序を抑制したように思われる。元来,大脳基底核は大脳皮質-基底核連関の一部として,運動の遂行・企図・習慣形成などに関わるとされている。この生体にとり極めて重要な回路形成の場であるため,虚血による障害は臨床上大きな問題となる。吸入麻酔薬のもつ脳保護作用の研究は始まったばかりであるが,その効果は吸入麻酔薬のもつ虚血耐性現象に大きな可能性を裏付けることが示唆された。
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Research Products
(1 results)