Research Abstract |
研究A.無麻酔下雌ラットの膀胱内に,TNP-ATP(P2X3受容体拮抗薬)を注入すると,用量依存性に排尿閾値圧,膀胱容量を増大した.一方,ATP(P2X受容体刺激薬)を膀胱内に注入すると,排尿閾値圧,膀胱容量を減少した.TNP-ATPを前投与しておくと,前述のATPの効果は抑制された.以上の結果から,P2X3受容体は膀胱尿路上皮求心性神経伝達系において促進的に働くことが判明した. 研究B.ムスカリンM2およびM3受容体の膀胱機能における生理的意義を,ノックアウト(KO)マウスを用いて無麻酔下での膀胱内圧測定を行って検討した.オスでは,M3KO群がM2KO群および対照群に比べて膀胱容量,1回排尿量および排尿間隔が増大していた.メスでは,M3KO群およびM2KO群が対照群に比べて,1回排尿量および排尿間隔が増大していた.Atropineの皮下投与は,M2KO群と対照群では,排尿効率を低下させ,残尿を増やしたが,M3KO群では効果を示さなかった.以上から,排尿時の膀胱収縮にとって重要なムスカリン受容体はM3受容体であり,M2受容体の関与は少ないことが判明した.M3KOマウスにおいて排尿機能障害が軽微であったことは,非コリン作動性機構がM3受容体の欠損を代償するためと考えられた. 研究C.難治性の排尿筋過活動(DO)患者4名および間質性膀胱炎(IC)の患者6名に対して,レジニフェラトキシン膀胱内注入療法を行い,その有効性・安全性を検討した.治療中・治療後を通して有害事象を認めなかった.DO患者4名中3名において,治療後1週以内に尿失禁・頻尿に対する改善効果が発現し,その効果は少なくとも1〜3か月間持続した.IC患者では,治療後早期から膀胱部痛を軽減する効果を認めたが,その効果の持続は2〜3か月と短く,排尿回数,1回排尿量を大きく改善させるまでには至らなかった.
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