2004 Fiscal Year Annual Research Report
胎児環境汚染のリスク評価に有用なバイオマーカーの同定
Project/Area Number |
16591641
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
長田 久夫 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (30233505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 理恵 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (00375635)
關 克義 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (90272319)
関谷 宗英 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00092065)
野村 文夫 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80164739)
森 千里 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (90174375)
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Keywords | 胎児 / 環境汚染 / リスク評価 / バイオマーカー / プロテインチップ法 / 臍帯血 / PCB / 臍帯 |
Research Abstract |
1)プロテインチップ法による胎児特異的血清蛋白群の網羅的解析 「方法」対象は、インフォームドコンセントの得られた正常妊娠経過母体の末梢血血清と、その正常新生児の臍帯静脈血ならびに臍帯動脈血血清の組み合わせ、計20組である。血清中の蛋白発現パターンをプロテインチップ法により、母体血清/新生児血清間、臍帯静脈血/臍帯動脈血間で比較検討した。候補蛋白分子の検索には、Swiss-Prot protein sequence databaseを用いた。 「成績」母体血清に比して新生児血清のみで認められた、あるいは有意に高値を示したピークは、陰イオン交換チップでは4個以上(分子量:5.5KD、7.1KD、10.0KD、14.3KD)、陽イオン交換チップでは2個以上(分子量:7.7KD、15.1KD)存在した。これらピークの分子量に該当する候補蛋白分子の中には、Transforming growth factor alpha、Platelet-derived growth factor, A chainが含まれていた。臍帯静脈血血清と臍帯動脈血血清間では、ピークパターンに差は認められなかった。 「結論」プロテインチップ法によって胎児特異的血清蛋白が複数存在することが明らかとなり、本法の有用性が確認された。 2)胎児のPCB(polychlorinated biphenyl)類への暴露状況に関する検討 「方法」2000年から2003年にかけてインフォームドコンセントを行ない、了承が得られた妊婦合計56人について、帝王切開時に臍帯、臍帯血、母体血を採取、それぞれを1検体として、PCB類の濃度測定を行なった。 「成績」測定した全ての臍帯、母体血からPCB類が検出された。2000〜03年、臍帯中のPCBを測定した23例(21〜44歳)では、脂肪重量あたりのtotal PCB(ng/g-fat)は14〜160、中間値は73、また母体血中のPCBを測定した52例(21〜43歳)では、脂肪重量あたりのtotal PCBは23〜580、中間値は88.5であった。母体血中のPCB濃度が臍帯中のPCB濃度を上回る結果となった。また、特に初産婦においては、母体年齢が高いほど臍帯中、母体血中のPCB濃度が高くなる傾向が認められた。2002年の測定では、臍帯と母体血をセットとして測定した。その中で、母体血中PCB濃度と臍帯中PCB濃度との間には正の相関が認められた。 「結論」すべての臍帯からPCB類が検出されたことより、胎児は子宮内でPCB類に暴露されていることが示された。また、母体血中PCB濃度と臍帯中PCB濃度の間に相関が認められることから今後母体血中のPCB濃度は胎児暴露における指標となり得る可能性が示唆された。
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