2004 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内膜症の発症・進展における細胞内シグナル伝達系に関する研究
Project/Area Number |
16591643
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大須賀 穣 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80260496)
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Keywords | 子宮内膜症 / メカニカルストレス / ERK1 / 2 / interleukin-8 / 炎症 |
Research Abstract |
子宮内膜症の発症と子宮収縮の異常が関連していることが示唆されている。一方、腹腔内の炎症性環境が子宮内膜症の発症・進展に寄与することが指摘されており、向炎症作用、白血球走化作用等を持つinterleukin(IL)-8などが重要な役割を担うとされている。今回は、異常な子宮収縮が過度のmechanical stressを子宮内膜細胞に負荷することが子宮内膜症発症の誘因であると考え、mechanical stressに対する子宮内膜細胞のIL-8産生の変化につき検討した。さらに、その機序につき検討を加えた。患者の同意のもとに手術検体より子宮内膜を採取し、間質細胞を分離培養した。これにFlexercell tension system(FX-4000T)を用いてmechanical stressを加え、定量的RT-PCR法を用いて4時間でのIL-8mRNA発現の変化を、また、ELISA法を用いて24時間での培養上清中のIL-8濃度の変化を検討した。刺激の条件は、23秒伸長7秒解除の周瑚的伸長刺激とし、細胞径を1.25倍に伸長する強刺激と1.15倍にする弱刺激、ならびに無刺激の3群に分けて比較した。さらに、mechanical stressに対するERK1/2のリン酸化ならびにERK1/2阻害剤投与の影響を調べた。結果は、強制激では無刺激に比較し、IL-8mRNAの発現が12.49±3.47倍(p<0.05)に増加し、培養上清中のIL-8濃度は3.85±0.28倍(p<0.001)に増加した。弱刺激下では無刺激に比較し、各々1.94±0.25倍(p<0.05),1.31±0.19倍(N.S.)であった。強刺激では弱刺激と比較し、有意に(いずれもp<0.05)大きな変化がみられた。mechanical stressは、ERK1/2のリン酸化を促進し、ERK1/2阻害剤は、IL-8の産生亢進を抑制した。子宮内膜間質細胞において、mechanical stressによりIL-8産生が増加し、この作用は伸展強度に依存することが示された。さらに、このメカニズムとして細胞内シグナル伝達系としてERK1/2が働いていることが示唆された。子宮の収縮異常は子宮内膜に対するmechanical stressを介してサイトカインなどの分泌を変化させることにより、子宮内膜症発症に関与する可能性が推測された。
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Research Products
(4 results)