Research Abstract |
CD68陽性マクロファージから産生される種々の物質の調節因子に関しては不明な点が多く,私たちは腹水中マクロファージから産生されるサイトカインについて,子宮内膜症の有無やlipopolysaccharide(LPS)処理の有無による相違を検討し,LPS処理した子宮内膜症患者由来マクロファージでは,LPS未処理あるいは非内膜症患者のものと比較して,HGFやその他のサイトカインの産生が有意に増加していることを認めた.また,HGFが子宮内膜症における腺上皮細胞,間質細胞およびマクロファージの増殖においてオートクラインあるいはパラクライン的に関与していることを証明した.これらの結果はHuman Reproduction誌において発表した(2005,20:49-60). また,私たちは子宮内膜症でのマクロファージを介したHGF産生調節に対する卵巣ステロイドホルモンの関与について検討した.骨盤内に浸潤したマクロファージにエストロゲンおよびプロゲステロン受容体の発現を確認し,エストロゲンがHGFなどのマクロファージから産生される各種のサイトカインを亢進させる働きがあることを見いだし,子宮内膜症の増殖・進展において,卵巣ステロイドホルモンと局所の免疫担当細胞が単独で,あるいは協同的に関与していると結論した.この結果はHuman Reproduction誌に受理されている(2005,20:2004-2013). LPSやエンドトキシン刺激によるToll-like receptor(TLR4)を介した子宮内膜症の増殖に関しては不明な点が多い.私たちは,子宮内膜症あるいは非内膜症由来腹水中のエンドトキシン濃度を測定し,子宮内膜症では非内膜症に比べ有意に腹水中エンドトキシン濃度が高いことを認め,LPSあるいはHsp70で処理したマクロファージから産生されるHGF,VEGF,IL-6あるいはTNF-α濃度は,子宮内膜症由来マクロファージで有意に高いことを認めた.TLR-4を特異的抗体で不活化させると,これらのサイトカイン産生および内膜症の増殖は抑制された.子宮内膜症患者腹水中の高いエンドトキシンレベルがTLR-4を介して内膜症の増殖に関与していることが示唆された.
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