Research Abstract |
既にわれわれは予備的な比較研究により,産後の母子異室ケアでは,母子同室ケアに比較し,褥婦のマタニティブルーズ(MB)の罹患率が有意に高いことを報告した(Int J Gynecol Obstet, 2002;78:25-30).本研究では,複数施設での無作為化比較試験を計画してスタートしたが,5施設のうち3施設が新潟地震に被災したため,当初計画した研究は不可能と判断し,ケースコントロール研究に変更した.今回は,母子異室ケアでの解析の前段階として,母子同室ケアを背景として,合併症妊娠のため妊娠中に入院加療を経験した褥婦におけるMBの罹患率について解析した. 本研究期間に収集された症例は合併症妊娠53例,正常妊娠分娩産褥106例であった.また,過去の研究(1998-2001)で収集されていた症例が382例であり,主として比較対照症例としての抽出に使用した.合併症のため入院加療を要した妊娠44例(糖尿病合併妊娠/妊娠糖尿病6例,妊娠高血圧症候群8例,切迫早産30例)と対照正常妊娠88例において,SteinのMB診断スコアにより,合併症妊娠群で12例(27.3%),対照群で18例(20.5%)がMBと診断され,罹患率は,有意差は認められなかったが,前群でより高かった.合併症妊娠群では,対照群に比較し,産褥3,4,5,10日目の平均スコアが有意に高かった.また,産褥各日毎のスコア8点以上の症例数が,合併症妊娠群では全体的に多い傾向にあった. これらのデータは,妊娠中の入院加療経験,これに続くいくつかの産科的異常がMBの発症に関与しうることを強く示唆しており,いろいろな産科的因子がMBの原因的因子となりうると推測される.MBは産後うつ病PDのハイリスク群として重大視されている.したがって,とくに合併症/異常妊娠においては,MBが発症しうることを考慮し,その予防のためのメンタルサポートを重点的に行う必要がある. 今後,母子異室ケアを背景とした研究を進め,このケアと産科的異常/合併症の加重がMBの罹患率にどのように関与するかに関して解析する予定である.
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