2006 Fiscal Year Annual Research Report
ラットモデルを用いたpolycystic ovaryの病態研究
Project/Area Number |
16591676
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 俊明 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (90213595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 英樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (00295346)
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Keywords | Zucker (fa / fa)ラット / インスリン抵抗性 / 多嚢胞卵巣 / adiponectin / 閉鎖卵胞 |
Research Abstract |
インスリン抵抗性ラットZucker (fa/fa)ラットを経(タ)時的観察をすると、週齢とともに肥満とインスリン抵抗性が顕著になる。ヒトでは肥満タイプの多嚢胞性卵巣症候群の女性がインスリン抵抗性を合併しやすいのでこのラットはそのモデルとして利用できると考えられる。 このZucker (fa/fa)ラットの卵巣は、卵胞数が増加傾向にあるが、一方TUNEL法によって卵胞穎粒膜細胞のapoptosisの存在を検討すると、顆粒膜細胞にapoptosisを起こした細胞が増加している閉鎖卵胞数(率も)が増加していた。また血中のアンドロゲンはdehydroepiandrosteroneが若干増加するものの、高アンドロゲン状態ではない。つまりこれは、高アンドロゲンのないインスリン抵抗性単独の病態でも多嚢胞形成さらに閉鎖卵胞の増加に寄与することを示しており、ヒトの多嚢胞性卵巣症候群でも存在する高アンドロゲンのないインスリン抵抗性が単独に存在するグループの病態でも多嚢胞、卵胞閉鎖を起こす可能性のあることを証明する画期的な研究成果である。また脂肪細胞から分泌される善玉サイトカインであるadiponectinも週齢とともに減少する。これは肥満による内臓脂肪の増強によると思われる。同時に卵巣局所でのadiponectinの発現も免疫染色によるタンパクの局在、real time PCRによるadiponectin mRNAの存在も示した。これは、卵巣局所のadiponectin発現が内臓脂肪由来ではなく、卵巣局所で産生していることを示している。この卵巣局所のadiponectin発現も週齢とともに減少傾向にあった。adiponectinの生理作用としては、インスリン感受性を増加させる働きは勿論、血管内皮のapoptosisの抑制、複数の癌における抗腫瘍効果など多彩な生理作用が知られている。卵巣局所におけるadiponectinの発現に関する報告はほとんどないため、その生理作用は今までは明らかではなかったが、インスリン抵抗性を合併するZucker (fa/fa)ラットで血中ならびに卵巣局所におけるadiponectinの発現の減少とともに閉鎖卵胞の割合が増加することから考えると、adiponectinは卵巣の卵胞閉鎖に対して抑制的に作用していることが示唆される。これを臨床の場で考えると、卵巣でのadiponectinの発現を増強させるような治療が可能であれば、これは多嚢胞性卵巣症候群の卵胞数の増加あるいは、卵胞閉鎖傾向を改善し、画期的な治療法の開発になる可能性があり、極めて有用な研究成果と考えられる。
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Research Products
(6 results)