2005 Fiscal Year Annual Research Report
血液細胞-血管内皮相互反応制御による眼微小循環疾患の病態解明と新治療法の開発
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16591749
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 和明 京都大学, 医学研究科, 助手 (90359810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 政代 京都大学, 医学研究科, 講師 (80252443)
桐生 純一 川崎医科大学, 眼科学, 教授 (80281096)
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Keywords | 糖尿病 / 黄斑浮腫 / ステロイド / 白血球-血管内皮相互反応 / 網膜光凝固 / アルガトロバン / P-selectin / ICAM-1 |
Research Abstract |
糖尿病黄斑浮腫に対するステロイドの硝子体内投与の奏効機序について、白血球-血管内皮相互反応の観点から検討した。糖尿病ラットを作製し、糖尿病発症3週間後にデキサメサゾンの硝子体内投与を行った。糖尿病群において網膜毛細血管床に捕捉される白血球数は増加していたが、デキサメサゾンの硝子体内投与により31.6%(P=0.0001)減少した。糖尿病群において悪化した網膜血管漏出度も同様に、デキサメサゾンの硝子体内投与により61.1%(P<0.01)改善した。また、糖尿病群において網膜のICAM-1の遺伝子発現および蛋白量は増加したが、デキサメサゾンの硝子体内投与によりそれぞれ70.0%(P<0.0001)、56.4%(P=0.0003)抑制された。これらの結果により、ステロイド硝子体内投与による糖尿病黄斑浮腫の改善機序は、ICAM-1を介した網膜微小循環における白血球捕捉を減少させることによる血液-網膜関門破綻の抑制である可能性が示唆された。 糖尿病網膜症に対する網膜光凝固による黄斑浮腫の増悪に、トロンビンの選択的阻害剤であるアルガトロバンが有効かどうか、ラット網膜における網膜光凝固後の非凝固網膜の白血球循環動態を評価することにより検討した。ラット網膜約半周を、アルゴンレーザーを用いて光凝固を行った。光凝固直前に浸透圧ポンプを用いてアルガトロバンを腹腔内持続投与した。アルガトロバン投与群において、光凝固後18時間後の白血球ローリングは46.6%(P<0.01)にまで抑制され、光凝固24時間後の集積白血球数は51.4%(p<0.01)にまで抑制された。またアルガトロバン投与群において、光凝固後に亢進する網膜におけるP-selectinおよびICAM-1の遺伝子発現は有意に抑制され(p<0.05)、網膜血管漏出も有意に抑制された(p<0.05)。以上の結果により、トロンビンの選択的阻害剤であるアルガトロバンは、網膜光凝固後の非凝固網膜における白血球-血管内皮相互反応を減弱させることによって、光凝固後にみられる網膜血管透過性亢進を抑制する可能性があり、糖尿病網膜症に対して行う網膜光凝固術後にしばしばみられる黄斑浮腫の増悪を予防する可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)