2005 Fiscal Year Annual Research Report
網膜再生治療を可能にするグリア制御機構に関する研究
Project/Area Number |
16591759
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福島 美紀子 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (10284770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 貴久 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (70372787)
越山 靖夫 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (40372784)
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Keywords | 網膜移植 / 再生医学 / 幹細胞 / グリア / サイトカイン |
Research Abstract |
1)NMDA傷害モデルラット眼へのGFPトランスジェニックマウス胎児脳由来神経幹細胞移植;緑内障における神経細胞死のモデルであるNMDA傷害モデル眼を用いて細胞移植を行なった。移植細胞は1ヶ月以上の長期に渡り、網膜に生着することが証明された。さらに神経特異マーカーを用いて移植細胞は網膜内でニューロン、グリアに分化することが示された。また用いた胎生14日目マウス脳神経上皮細胞は網膜内で優位にグリア細胞に分化することが認められた。 2)移植網膜におけるグリア活性化;移植された網膜のミューラーグリアは長期にGFAP、nestin陽性のreactive gliaの反応を示し、移植部位のみならず網膜全体にこの反応が認められたことから、ごく少数の細胞を移植することでも網膜内全体の環境変化が生じうることが示唆された。 3)レトロウィルスベクターを用いた移植細胞の遺伝子導入による細胞系譜の制御;移植細胞をニューロンに優位に分化させることを目的にプロニューロナル遺伝子であるneurogenin(Ngn)1をレトロウィルスベクターに組み込み、遺伝子導入し、その細胞系譜の制御を行なった。In vitroにおいて遺伝子導入細胞ではグリアへの分化誘導作用が知られているサイトカインであるLIF、BMP存在下でも優位にβ-tubulin陽性のニューロンに分化することが示された。しかし、in vivoにおいては早期に分化させることにより増殖、網膜への侵入、生着が低下し、このため移植効率が低下することが示唆された。 4)非ステロイド系抗炎症薬投与によるグリア分化の制御;グリア活性化に対する抑制効果が知られている非ステロイド系抗炎症薬の宿主マウスへの投与により傷害後の網膜のgp130、CNTF蛋白の発現が抑制された。さらに宿主網膜におけるCNTF、GFAPの発現が抑制された。さらに移植幹細胞の網膜内のGFAP陽性細胞の割合は低下し、宿主網膜のIL-6ファミリー分子の発現低下により移植細胞のグリアへの分化が抑制されることが明らかになった。 5)gp130ノックアウトマウス由来神経幹細胞移植;IL-6ファミリー分子の受容体の構成分子であるgp130ノックアウトマウスにおけるグリア分化を網膜発生過程において検討した。ミューラーグリアにおけるGFAPの発現抑制が認められた。さらにgp130ノックアウトマウス由来の神経幹細胞を傷害網膜に移植するとグリアへの分化が有意に抑制された。これらの研究から傷害網膜の環境因子が移植細胞の分化に影響を与え、IL-6ファミリー分子はその分子機構の一つであることが明らかとなった。
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