2004 Fiscal Year Annual Research Report
粘膜上皮・線維芽細胞による酪酸誘導T細胞アポトーシス解除機構の解析
Project/Area Number |
16591834
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
落合 邦康 明海大学, 歯学部, 教授 (50095444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 修 明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)
天野 滋 明海大学, 歯学部, 助教授 (90167958)
横塚 由美 明海大学, 歯学部, 助手 (20348189)
瀬戸 真太郎 明海大学, 歯学部, 助手 (50383203)
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Keywords | 酪酸 / T細胞 / アポトーシス / 線維芽細胞 / 上皮細胞 / 脂肪酸 / 接着分子 / tight junction |
Research Abstract |
我々は歯周病原細菌が産生する短鎖脂肪酸(SCFA、特に酪酸の為害作用について、そのアポトーシス誘導性と解除機構について詳細に検討を行ってきた。すなわちSCFAは、マウスやヒトT細胞やB細胞に顕著にアポトーシスを誘導し、その作用は、酪酸で最も強く、酪酸によるT細胞アポトーシス誘導機序をほぼ解明した。口腔粘膜上皮細胞や歯肉線維芽細胞(HGF)は、酪酸に対し極めて強い抵抗性を持ち何ら細胞変性を生じず、低濃度の酪酸によりHGFの発育は促進され、T細胞はHGFの産生する、IL-8、IL-11の作用により酪酸誘導アポトーシスを回避できる。酪酸存在下の共存培養により、HGFに付着するT細胞数は急激に増加する。付着T細胞はほぼ完全に酪酸誘導アポトーシスを回避することができる。その付着にはCD44、CD49b及びCD49を仲介とすることなどが判明した。そこで、酪酸の組織に及ぼす影響を有孔膜上に形成した粘膜上皮細胞株KBのmonolayerを用い、double chamber内でSCFAのtight junction (TJ)に及ぼす影響をtight junction transepitherial electrical resistance system (TEER)用いた電気抵抗性の変化で測定した。その結果、内腔側SCFAを添加しても電気抵抗性に変化は認められなかったが、内腔に酪酸を入れた場合のみ顕著な電気抵抗性の上昇が認められた。これは酪酸が、粘膜上皮細胞のTJを閉鎖するなどの変化を示し外部刺激に反応している可能性を示している。しかし、KB細胞から酪酸に感受性の細胞をクローニングし、同様の実験を行った結果、酪酸添加後も電気抵抗性に変化はなかった。これらの結果からは、組織が細菌の産生する酪酸を認識し、TJを閉鎖するなど反応により酪酸及び細菌の組織内浸潤を阻害している可能性を示している。酪酸産生細菌の多くは歯周病原性菌であるため、正常粘膜上皮細胞は酪酸刺激によりTJを閉鎖し、為害物質や菌の侵入を阻止している可能性がある。しかし、TJ閉鎖ができない場合はそれらの侵入を容易にするため組織破壊や局所免疫の異常が引き起こされる可能性が示唆される。
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