Research Abstract |
トリプトファン水酸化酵素は,2種類の相同の遺伝子によって,TPH1,TPH2がコードされる。TPH1が進化のうえで基本形と考えられており,中枢神経系から末梢のセロトニン産生細胞に広く発現している。TPH2は中枢神経系に限られているとされる。TPH1を発現する肥満細胞系樹立細胞株RBL2H3を用いた研究から,TPH1はこの細胞中では半減時間が15-30分ときわめて短く,その分子分解はユビキチン/プロテアソーム系によるものであり,ユビキチン化のきっかけは,酵素タンパク質のリン酸化であることを明らかにしてきた。それを土台に本研究がプランされた。16年度には,本研究の主題のうちで,リン酸化部位が酵素タンパク質のアミノ酸配列のどれであるかを特定する事に集中した。配列部位特異的点変異の導入手法によって,予想されるいくつかのアミノ酸残基を置換して被リン酸化能を消去する変異TPH1を作成した。PKAとCaMKIIによるリン酸化部位の変異S58A, CaMKIIによるリン酸化部位であるS260A, PKAによるリン酸化部位であるS443Aを作製した。これらは,pEFベクターにTPH1のORFのみを導入した。各ベクターの遺伝子導入によってHeLa細胞に発現した変異TPH1はいずれも,天然型と同等の酵素活性を示した。さらに,N末端にHis-タグを付加したそれぞれのTPH1変異体S58A+S443A, S260A+S443Aも作製し,現在,発現ベクターを調製中である。他方,RBL細胞へのプラスミド導入は困難をきわめ,試みたいくつかの陽イオン性ポリマーや陽イオン性リピッド助剤による方法では成功しなかった。現在,異なった原理による導入方法を検討中である。
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