Research Abstract |
セロトニン合成の律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素(TPH)には二つのホモローグ,TPH1およびTPH2がある。TPH1が基本形とされ,成体の末梢組織では,TPH1が強く発現し,中枢神経系ではTPH2が強く発現している。TPH1を発現するラット肥満細胞由来の樹立細胞株RBL2H3において,1)ユビキチン/プロテアソーム系によって,きわめて速い分子代謝回転が観測される,2)TPH1のユビキチン化はTPH1のリン酸化を指標としていることを明らかにしてきた。本課題では,TPH1のユビキチン化の指標となるリン酸化部位を同定しようとしている。従来(TPH1,TPH2が区別されていない段階で)TPHのリン酸化はTPHを活性化すると考えられ,セリン58,セリン256,セリン443がリン酸化されうることが報告されている。今年度,我々はラットTPHのcDNA上に一つのセリン(S58A, S256A, S443A)および二つのセリン(A58/256A, S58/443A)をそれぞれアラニンに置換する点突然変異の導入(site directed mutagenesis)を行った。この変異TPHを発現するプラスミドベクターを調製して,TPH1に対してリン酸化/ユビキチン化/プロテアソーム分解の能力を具備するRBL2H3細胞にて強制発現させた。その結果,いずれの変異TPHも,野生型TPHと同等のTPH活性を示した。しかし,これらの変異TPHはいずれも,プロテアソームによる分解の有意な遅延を認めなかった。I-kBタンパク質のユビキチン化におけるリン酸化に例を見るように,複数箇所の同時リン酸化を要する可能性を考慮して,次年度には,TPH1のもつ被リン酸化(候補)アミノ酸の複数の組み合わせについて,変異導入を試みる。
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