Research Abstract |
ラットの肥満細胞由来の樹立細胞株RBL2H3は免疫刺激(IgEとその特異抗原)に応答して肥満細胞に特徴的なヒスタミン,ロイコトリエン,セロトニンなどを分泌する。同時に,消費した分泌物を再生産する細胞状態が観察され,その一環として,セロトニン合成の律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素(TPH)が誘導されるため,本細胞はアレルギー研究に好材料である。RBL2H3細胞において,1)ユビキチン/プロテアソーム系による,TPHのきわめて速い分子代謝回転が観測される,2)TPHのユビキチン化はTPHのリン酸化を指標としており,リン酸化を薬剤によって阻止すると,プロテアソームによる分解が抑制される。本課題では,TPHのユビキチン化の指標となるリン酸化部位を同定しようとしている。従来,TPHは,セリン58,セリン260,セリン443がリン酸化されうることが報告されている。本研究では,ラットTPHの該当するセリンをアラニンに置換する点突然変異の導入を行ってきた。昨年度までに,S58A, S260A, S443A,および二つのセリンを置換したS58/443A, S260/443Aを調製し,本年度にはさらにS58/260A,および,三つのセリンを置換したS58/260/443Aを調製した。これらの変異TPHをコードするプラスミドベクターはいずれも,HeLa細胞に導入すると,活性なトリプトファン水酸化酵素を発現した。TPHに対してリン酸化/ユビキチン化/プロテアソーム分解の能力を具備するRBL2H3細胞への導入を試みた。しかし,本細胞による強制発現は,導入率を数%以上に上げることが困難であった。次年度には,1)上記セリンをグルタミン酸に置換して構成的偽リン酸化状態を実現する変異導入を試みるとともに,2)RBL2H3細胞の破砕液を用いた無細胞系プロテアソーム反応による変異体の被分解能を検証する。
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