Research Abstract |
破骨細胞の形成は,骨芽細胞由来のRANKLと破骨細胞前駆細胞のRANKL受容体(RANK)を介する細胞間相互作用によって行われる。また,歯根嚢胞は,種々の炎症性サイトカインによって破骨細胞の形成が促進され,嚢胞周囲骨の吸収が起こり拡大すると考えられている。我々は,IL-1α刺激を受けた骨芽細胞は自らの骨形成能が低下するとともに,マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)とPGE_2の産生増加および破骨細胞形成抑制因子の産生低下によって,破骨細胞の形成を促進させることを報告した(Life Sci 75,2004; Life Sci 77,2005)。そこで,本年度は,骨芽細胞との細胞間相互作用後の破骨細胞前駆細胞の成熟過程と機能に視点をおき,破骨細胞前駆細胞として単球/マクロファージ(RAW264.7)を用い,骨無機質の溶解に不可欠な酸(H^+)産生を担う炭酸脱水酵素II型(CAII),酸性条件下での骨有機質分解に不可欠なカテプシンKとマトリヅクス金属プロテアーゼ-9(MMP-9)の発現に及ぼすIL-1α存在下でのRANKLおよびM-CSFの影響を検討した。また,RAW264.7から破骨細胞への成熟過程におけるこれらの因子の影響を明らかにするために,RANK, M-CSF受容体(c-fms)および細胞内シグナル伝達因子(c-fos)の発現も併せて検討した。その結果,破骨細胞によるIL-1α存在下でのCAII,カテプシンK, MMP-9, RANKおよびc-fosの発現は,M-CSFではなくRANKLによって誘導されることが明らかになった。一方,c-fmsの産生には変化が認められなかった。以上のことから,炎症性サイトカインの刺激によって骨芽細胞が産生するRANKLは,破骨細胞形成の促進を介して,歯根嚢胞の拡大に深く関与していることが示唆された。
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