Research Abstract |
口腔ジスキネジアの発現には,中脳辺縁系ドパミン(DA)神経の終末領域の側坐核のDA神経機能亢進が関与することが指摘されている。ペプチド型δ受容体作動薬は側坐核に灌流投与すると,同部位のDA遊離を著しく促進する。しかし非ペプチド型のδ受容体作動薬候補物質として近年開発されたTAN-67の側坐核DA遊離への作用については明らかでない。そこで,TAN-67が側坐核細胞外DA量に及ぼす効果について,脳微小透析法を用いて検討を行った。 実験にはSD系雄性ラット(体重 約200g)を用い,透析プローブで側坐核からサンプルを回収し,25分毎にDAをHPLC-ECD法で定量した。TAN-67は灌流液に溶解し,透析プローブを介し逆透析で側坐核に灌流投与した。その結果,(-)体または(+)体のTAN-67(25,50nmol)の側坐核への投与は,同部位のDA量を用量依存的に増加した。このDA量の増加は,ナロキソン(1mg/kg)の前投与やTTX(2μM)の併用灌流投与では抑制されなかったが,レセルピン(5mg/kg),α-メチルチロシン(250mg/kg)の単独前処置で抑制され,併用前処置でほぼ完全に抑制された。一方,(-)-TAN-67誘発DA遊離は,NMDA受容体拮抗薬のイフェンプロジル(20mg/kg)またはMK-801(0.5mg/kg),フリーラジカル除去薬のN-2-MPG(100mg/kg)の前投与で強く抑制された。 以上の結果から,TAN-67は,(-)体,(+)体とも,側坐核に灌流投与すると,同部位のDA量を,オピオイド受容体は介さずに神経活動非依存性に増加することが示唆された。また,このDAは殆どDA神経由来であることが示された。さらに,(-)-TAN-67誘発側坐核DA遊離の発現には,NMDA受容体の活性化やフリーラジカル類の産生が関わる可能性が示唆された。
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