2005 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経細胞のシナプス前終末内カルシウムイオン濃度変化に対する全身麻酔薬の効果
Project/Area Number |
16592008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池本 清海 九州大学, 歯学研究院, 教授 (90091272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
怡土 信一 九州大学, 歯学研究院, 助手 (00315095)
北原 誠子 九州大学, 歯学研究院, 助手 (60363339)
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Keywords | 全身麻酔薬 / 神経伝達 / シナプス前終末 / カルシウムイオン濃度 / カルシウム測光 / 単離神経細胞 / 海馬 / ラット |
Research Abstract |
全身麻酔薬は中枢神経系において神経伝達を修飾して、その作用を発揮すると考えられている。シナプス後膜に存在する伝達物質受容体の活性に対する麻酔薬作用の研究は多いが、伝達物質放出に関する報告は少ない。我々はラット脳のスライスから海馬を取り出し、その表面を振動する微小ガラス管の先端で機械的に処理することにより、シナプス前終末(ブートン)の付着した神経細胞を単離した。FM1-43を負荷し、その蛍光により直径約20μmの神経細胞に付着するブートンを同定した。さらに、Fluo-3AMの蛍光を測定して、神経細胞内およびブートン内のカルシウムイオン濃度を測定した。 興奮性伝達物質グルタミン酸は、神経細胞内および神経終末内のカルシウムイオン濃度を、用量依存性に(1-300μM)上昇させた。両者の上昇の程度に差異は無かった。無カルシウム液中ではこの上昇は見られず、グルタミン酸による細胞内カルシウムイオン濃度上昇は、細胞外からのカルシウムイオン流入によることが示された。L型カルシウムチャネルブロッカー、ニモディピン(2-10μM)、FS2(100-300nM)およびカルシクルディン(10-30nM)、はこの濃度上昇を用量依存的に抑制した。また、CNQXは神経細胞内およびブートン内のカルシウムイオン濃度上昇を用量依存的(3-30μM)に抑制した。 静脈麻酔薬ペントバルビタールは、GABA反応を促進することが知られているが、神経細胞内およびブートン内の、グルタミン酸によるカルシウムイオン濃度上昇を抑制した。この抑制は用量依存的であり(3-1000μM)、抑制の程度は神経細胞よりもブートンの方が大であった。特に100μM前後では神経細胞内の減少は軽度であったが、ブートン内では約30%に減少した。 伝達物質放出には神経終末内のカルシウムイオン濃度上昇が必須であると考えられている。グルタミン酸は神経終末内のカルシウムイオン濃度を上昇させることにより、伝達のシナプス前調節を行っている。バルビタール作用の一端は、グルタミン酸によるカルシウムイオン濃度上昇の抑制に依存していることが示された。
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Research Products
(1 results)