2005 Fiscal Year Annual Research Report
口腔バイオフィルム内のクオラムセンシングの解明とその制御によるプラーク形成の抑制
Project/Area Number |
16592050
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
星野 倫範 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00359960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 卓 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00228975)
久保田 一見 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (30240914)
新川 弘恵 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (60346921)
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Keywords | ミュータンスレンサ球菌 / バイオフィルム / クオラムセンシング / ミティスグループレンサ球菌 / α溶血性菌 |
Research Abstract |
う蝕の原因となるデンタルプラークは、歯面に成立したバイオフィルムであり、口腔内の環境の変化、抗生剤、宿主の免疫などの侵害刺激から逃れるための防御壁となっている。このバイオフィルムは、ミティスグループレンサ球菌などの早期にヒト口腔内に定着するレンサ球菌が産生した菌体外多糖(グルカン)を足がかりとし、さらに粘着性の高い不溶性のグルカンを産生するミュータンスレンサ球菌が定着することによって形成され、う蝕や歯周病の発生に大きく関与する。このバイオフィルム中で、細菌はホルモン様伝達物質であるオートインデューサーを放出し、菌種間で互いにコミュニケーションを取ってバイオフィルム中の細菌の密度を一定に保ったり、免疫に対抗する集団を形成したりすることで共生しており、この現象はクオラムセンシングと呼ばれている。 本研究ではプラークバイオフィルムにおけるクオラムセンシング機構を解明するために、まず口腔バイオフィルム内で互いにコミュニケーションを取り合っているメンバーを同定することにした。そのための手法として16S-23S ribosomal RNA intergenic spacer遺伝子を利用したPCR法によるレンサ球菌の菌種同定法を開発し、Pediatric Dental Journal誌に"Method for rapid identification of oral streptococci by PCR using 16S-23S ribosomal RNA intergenic spacer"と題して発表した。これにより、デンタルプラーク中の60%以上を占めることから口腔バイオフィルム内クオラムセンシングの中核をなすと考えられるレンサ球菌の迅速な同定が可能となった。その一方で、歯の生える前からの乳児を対象とした長期的な口腔細菌叢の変遷および保育園の児童を対象とした横断的な口腔細菌叢の相違を観察し、ミティスグループレンサ球菌などのα溶血性を示す菌群は、ミュータンスレンサ球菌が口腔内に定着するとその口腔内の総菌数に対する割合が減少することを明らかにし、ミュータンスレンサ球菌とα溶血性菌の間に何らかのクオラムセンシングの機構が働いていることを示唆した。このことは、"Establishment of S.mutans Changes Salivary Bacterial Ratio"と題して、現在英文誌に投稿中である。今後は、ミュータンスレンサ球菌とα溶血性レンサ球菌間のクオラムセンシングに関わる分子を同定する予定である。
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Research Products
(1 results)