2006 Fiscal Year Annual Research Report
手指による汚染は歯科補綴物をDNA源とした個人識別にどれだけの影響をおよぼすか
Project/Area Number |
16592095
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
花岡 洋一 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (30180912)
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Keywords | 法歯学 / DNA / 歯科材料 / 汚染 |
Research Abstract |
これまでの研究により、手指の接触によっても、吸光度上10ng以上のDNAが得られる場合があり、さらにこの場合、全例において手指の圧接者のDNA塩基配列を確認できた。 このことから、本年度は手指による汚染が影響を及ぼすDNA量およびDNA分析の種類をさらに明確にするため、以下の研究を実施し、下記の結果を得た。 i.mtDNAシークエンス既知の女性手指をあらかじめ圧接した試料片(レジン、銀合金、パラジウム合金)のうち、抽出DNA量が10ngに満たない資料を用い、これにmtDNAシークエンス既知の男性手指を圧接して、バンドによる性別判定とシークエンシングによる検査結果の比較を行った。その結果、バンドによる判定ではいずれも男性を示し、シークエンシングでも男性の塩基配列が検出された。 ii.D4s43 locusにおけるVNTRの変異を検索し、既知の結果と比較して、分析が正確に行われたか否かを判定したところ、10ng以上のDNAが得られた試料では問題なく型判定が可能であった。 iii.さらにCSF1PO, TPOX, THO1を中心としたSTR多型の判定を試み、上記と同様に10ng以上のDNAが得られた試料では問題なく型判定が可能であった。 iv.上記と平行し、本年度も実際に口腔内に装着されていた歯科補綴物の収集に務め、これまで得られた資料から、DNA抽出を行ったところ、抽出量にばらつきは認められたものの、およそ40ngから1.5μgのDNAが抽出された。 以上のことから、手指の接触は10ng以上のコンタミを及ぼす可能性が高く、その場合には、判定結果に重大な影響を及ぼすことが明確となった。そのためコンタミの疑いを持たれる場合には特にシークエンシングによる確認が必須であると結論づけられた。
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