2004 Fiscal Year Annual Research Report
感染症アウトブレイクにおけるQOL向上を目指したケアスキルと教育プログラム
Project/Area Number |
16592134
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
三橋 睦子 久留米大学, 医学部, 助教授 (50289500)
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Keywords | 感染症 / 結核 / QOL / リスク認知地図 / GHQ / アウトブレイク / 自律神経 / パーソナルスペース |
Research Abstract |
結核感染症による入院患者を対象として、隔離による身体・心理・社会的影響をレトロスペクティブに調査した。18歳以上、会話可能、全身状態の安定と個人の承諾を選考基準として、8月より実施した。対象は35名で、入院1週間後28名・1ヶ月後20名・3ヵ月後12名。平均年齢55.5±19.2歳。平均入院日数83.77±42.1日。 調査の結果 身体的側面:主症状として咳が継続し、入院期間と弱い正の相関傾向(r=.275,p=.056)を認めた。24時間ホルター心電図による交感神経成分(LF/HF;0.04〜0.15Hz)の分析では、入院経過の影響を認めなかった。副交感神経活動(HF;0.15〜0.4Hz)の変動は、睡眠時覚醒時に関係なく概ね1週間後が1ヵ月後3ヵ月後より成分が高かった。しかし3ヵ月後には、準夜・深夜帯で1ヵ月後より成分が高くなっていた。3ヵ月後に自律神経のリズムの回復が推測された。 心理的側面:経過が長くなると"支援を受けている"認識は低下した。全般的には全く支援が無いと認識している人が多かった(p<.05)。本対象は男性に高齢者、女性に低年齢者を認め、YG性格検査の結果、高齢者に情緒面が安定した人が多く、年齢が低いほど不安定な人を認めた(r=.255,P=.055)。しかし、高齢者の方がGHQ30の平均得点は高く、うつ的傾向を認めた(r=.333,p=.021)。入院期間が長くなるとGHQ評定は低下し、精神面の回復を認めた。QOL得点は1ヵ月後に最も低下し、3ヵ月後には1週間後より高くなっていた。入院1ヵ月後が一番辛い時期と推測され、三ヵ月後には退院も近づき回復すると考えられる。感染症のリスクイメージは、リスク認知地図では、期間が長くなると恐ろしさ因子得点が低下し、未知性因子得点が上昇する一定の方向性を認めた。体験により恐ろしさは低下し、対象が感染症の知識を知らないと気付くと推測される。 社会的側面:パーソナルスペースは、1週間後より1ヶ月後に有意に広がっていた(p<.05)。どちらも、いわゆる相手の表情を見て取ることができる固体距離としては十分であった。隔離入院による人との対人回数の極端な減少と、隔離されることで病識が高まったことが起因していると推測される。隔離環境に甘んじることを「病気だから今はしかたない」と、人との距離をとることで、自分が傷つかないように用心して心のバランスをとっていると思われた。 以上、現在インタビューによる逐語録を分析中である。
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