Research Abstract |
遺族が体験した悲嘆過程と悲嘆に影響を与える要因を明らかにする目的で,鹿児島県内の一般病棟で,家族を亡くし1年以上経過した遺族を対象に,面接調査を実施した.倫理的配慮として,患者が入院していた病院の倫理委員会で承認を受け,看護部を通じて対象者を紹介いただいた.対象者には,プライバシー保護などについて説明し,書面をもって同意を得た方とした,家族は,患者の入院中,「看護師が,患者だけでなく家族もケアすることを知らなかった」,「他の家族に相談できず,一人で悩みを抱えていた」,患者と死別後は,「医師や看護師が,患者の葬式に参列してほしかった」,「患者の死亡後,病院との関係がぷっつりと切れ,孤独感を感じた」,「病院の医療者と話をしたかったが,できなかった」,「家族や近所の人にも,患者の事を話せなかったが,誰かに聞いてほしいと思っていた」などが聞かれた.家族は,終末期のケアの対象が,家族も含まれているということを知らされておらず,絶望と孤独感の中で,患者の看病に当たっていた.さらに患者との死別後は,特に孤独感が強くなるため,病院からの電話,手紙やはがきなどによる励ましが,家族の心を和ませることになると思われた. カナダにおける終末期医療および遺族ケアの現状を把握する目的で,マクマスター大学,聖ピーター病院緩和ケア病棟を見学した.マクマスター大学病院では,悪い知らせを家族に伝える場合には,特別な部屋が準備され,そこで家族と主治医,看護師,ソーシャルワーカーが同席して納得いくまで話ができるようになっていた.また患者の状態がよくない時には,病棟内に家族が宿泊できる部屋があり,簡単な料理ができるようなキッチンも完備してあった.終末期,死別後は,主にソーシャルワーカーが家族のケアをしていた.日本ではまだ制度として整備されていないソーシャルワーカーの導入により,家族にも入院中から死別後まで継続的なケアができることが理解できた.入院中の医師や看護師のケアに関する家族の評価は,非常に高く,患者だけでなく家族にも配慮したケアが行われていることが実感できた.遺族ケアは,定期的なカードの発送,遺族会の開催などであった.聖ピーター病院緩和病棟において,病室は個室と大部屋があり,面会室,キッチンなどが整備されていた.リハビリテーション室が隣接しており,終末期の患者でも,本人の希望がある場合にはリハビリを理学療法士や作業療法士が付いて行っていた.日本では,終末期の患者にリハビリを行うという積極的な働きかけは一般的でないが,患者が残された日々を前向きに生きようとする姿勢を支持することは非常に重要であると実感した.終末期の患者・家族へのケアは,医師,看護師だけでなく,ソーシャルワーカーなどの他職種と医療チームを編成し,継続的に行うことの重要性が示唆された.今後は,遺族が体験した悲嘆の過程とそれに影響を与える要因に関して,引き続き面接調査を行い明らかにする.さらにこれらの結果をもとに,一般病棟における遺族ケアのシステム化を目指し,遺族を支える看護のあり方を考察する.
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