2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16602021
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
大野木 啓人 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (50368065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 悦子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授
八幡 はるみ 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (50351367)
松井 利夫 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (50368057)
上村 博 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20232796)
松原 哲哉 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (60351368)
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Keywords | 環境デザイン / 太陰暦 / 行事 / 空間デザイン / 地域性 / 時間 / 感性 / 造形芸術 |
Research Abstract |
今年度の研究活動は主に太陰暦に関する基本情報の収集と検討、そして平成17年度以降にむけた計画策定に充てられた。研究活動は全体の研究会合と分担者個々の調査研究とを併行させる形で実施された。 研究会では、芸術作品の受容と近代的な時間意識との関係が特に議論された。そこで得られた知見は以下の3点である。 1.近代的な社会での分業と時間管理という条件が芸術作品の構造や受容形態にも影響している。劇場や美術館といった特権的な芸術受容の場の成立は、実は芸術的にきわめて貧困な生活様式の蔓延と軌を一にしており、そうした芸術的制度に依拠しない本来の感性的な能力の涵養は表象芸術の新しい領域を切り開く可能性がある。実際、農事や生活暦に見られる自然環境の微細な兆しの知覚や、それに併せた衣食住の変化は非常に多彩な文化を生み出してきた。 2.ただし、そうした地域文化の多様性は、決して単独では自覚され意味づけられることはなく、むしろ詩歌や芸能の都会的な文化伝統との対比によって価値付けがなされる。江戸時代の後半から開発が進んだ各地の風土に、京都や江戸といった文化の集約地からの情報がもたらされることで、自然や文化の差異を生かした独特の芸術環境が形作られた。 3.他方で、時間経過は何も人間の意図的な制作物によってのみ記録されるわけではない。自然界には宇宙的な歴史をそれ自身の中に刻印したものがあり、とりわけ潮汐や気温の変化を蓄積した自然物は、それ自体物的な記憶として、人間には発想困難な情報痕跡の形を示している。そうした時間の受け止め方やその結果としての時間表象は、我々の生活時間のデザインにとっても重要な示唆を与えてくれるものである。 以上の観点をもとに、暦と表象芸術のかかわり方について、複数地域で具体的に実験的に検証していくことが今後の課題である。
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Research Products
(4 results)