2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16605007
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 隆 山口大学, 理学部, 教授 (00127797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦上 直人 山口大学, 理学部, 講師 (50314795)
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Keywords | 高分子 / 結晶化 / らせん高分子 / 分子認識 / 計算科学 / コンピュータ・シミュレーション / 分子動力学シミュレーション / モンテ・カルロ法 |
Research Abstract |
非常に長く膨大な内部自由度を持つ分子鎖は、複雑に絡まりあったランダム状態から、規則正しく折り畳まれながら均一な厚みの板状結晶を形成する。これは、大変不思議な過程であると同時に高分子構造形成過程の根本である。長い間、学問的・工業的関心が持たれ、半世紀以上の精力的な研究がなされてきたが、未だ多くの謎が残されている;分子鎖が秩序化するときに辿る複雑な"PATH"を実験的に明らかにすることには大きな困難がある。しかし、近年コンピュータを用いた様々な分子過程の"直接観察"が可能になるとともに、高分子結晶化の分子レベルでの理解も新たな発展段階を迎えつつある。単純な分子幾何学を持つ直線状の高分子に関しては既に多くの分子シミュレーションが報告されてきた。しかし、多くの高分子は、DNAや蛋白なども含めて、特徴的な螺旋構造を有する。このような高分子鎖の巨視的な三次元秩序の形成過程においては、局所的な分子内秩序形成のみならず、分子内と分子間の秩序形成の協同あるいは競争過程が存在する。また、秩序形成過程における分子認識(螺旋センス・キラリティーの選択)や螺旋反転の伝播など、計算科学に大きな挑戦的課題を提供している 我々は、分子動力学法(MD法)やモンテ・カルロ法(MC法)を用いて、螺旋ホモポリマーの結晶化シミュレーションの研究を行った。我々は、螺旋高分子を、側鎖を持たない分子骨格のみで出来た裸の螺旋と、より一般的な複雑な側鎖をもった螺旋に分けて考察した。前者では、分子鎖の幾何学が単純で分子間相互作用にも特異性が少なく、結晶化におけるらせん選択過程(RLの分子認識)もゆるく、速い結晶化が観測できた。他方、一般的な螺旋高分子モデルとして採用したアイソタクチックポリプロピレン(iPP)では、ランダムコイル状態からの秩序形成が極めて緩慢である一方結晶化における分子配列の選択過程(RL認識)が非常に厳格であることを明らかにした。十分大きなスケールでの秩序形成過程の直接観察は未だ実現出来ていないが、それは秩序状態へのPATHが狭く険しい(自由エネルギーの障害;エントロピックにもエンタルピックにもが非常に大きい)事を示唆する。 我々は更に、らせん分子オリゴマーの秩序形成過程の研究も行った。裸の螺旋分子結晶での螺旋センスに関する秩序・無秩序転移が存在することをMD・MC計算により明らかにした。また、融液からの結晶化過程では、上記の転移以下での秩序相への結晶化においては、結晶化の核や巨視的結晶の成長面では明瞭な螺旋認識は観測されず、キラル秩序化は、結晶化後の結晶構造相転移を通して完成されることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)