2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末〜20世紀初頭における都市計画と都市行政システムの英独比較
Project/Area Number |
16610003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 哲 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40192710)
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Keywords | 都市行政 / 都市計画 / 自治体合併 / 上級市長 / 都市間競争 / 英独比較 |
Research Abstract |
(1)比較近代都市史研究における重要な検討課題のひとつである自治体合併について、ドイツ全域における19世紀半ばから20世紀初頭に至る時期の展開過程を、ドイツ都市統計と主要都市のモノグラフを用いて概括的に把握する作業を行い、以下の点を明らかにした。自治体合併は、工業化と都市化の進展によって市域内の人口が増大し様々な都市問題が発生した結果、重要な政策課題となった。こうしたなかでドイツの諸都市は、それぞれの歴史的事情に制約されつつも、上級市長の主導のもとで「都市間競争」にも促されて市域を拡張し、この時期活発に展開された住宅政策、工業政策、交通政策、都市計画などの都市政策の前提を創出した。それとともに19世紀半ばに見られた市域面積と人口の著しい不均衡が20世紀半ばまでにかなりの程度解消され、都市と周辺農村との新たな関係が築かれることになった。 (2)19世紀末〜20世紀初頭のイギリスにおけるドイツ都市政策・都市行政認識がどのようなものであったかについて、マンチェスターの慈善活動家であったトマス・コグラン・ホースフォールとバーミンガムのカウンシル議会議員で住宅委員会委員長を務めたジョン・サットン・ネトルフォールドの活動と言説を分析する作業を進めている。両者は、イギリスの住宅問題解決のために、「先進的」と言われたドイツの諸都市を視察し、周到に練られた建築計画の準備と実施、それと関連する周辺自治体の合併、都市近距離交通の整備、都市政府による市域内外の土地の購入、オープン・スペースの確保といった「都市拡張計画」に注目するとともに、ホースフォールはさらにこうした政策が「効率的かつ経済的」に行われるための前提として、ドイツのように市長や都市行政幹部を任期の長い有給専務職に転換することを提唱した。両者の関心はきわめて実践的であり、イギリスにおける都市計画運動を生み出す原動力となった。
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