2005 Fiscal Year Annual Research Report
ラウリル酸の炎症メディエーター産生増強作用とリスクアセスメント
Project/Area Number |
16613004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 明 京都大学, 農学研究科, 助手 (10271412)
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Keywords | ラウリン酸 / 炎症 / 大腸がん / aberrant crypt foci / inter leulcin-1β / cyclooxygenase-2 / nuclear factor-κB / 脂肪酸 |
Research Abstract |
近年、炭素鎖12個の脂肪酸であるラウリン酸(LA)が株化マクロファージにおける炎症・発がん関連転写因子のNFκBの活性化を誘導することが見出された。そこで本研究では、腹腔マクロファージにおける炎症性サイトカインの誘導作用の有無、実験動物における炎症惹起性、さらに大腸発がんマーカーに関する影響を評価した。まず、腹腔マクロファージでは、LAはIL-1β、MIF、さらにIL-6の産生を誘導する一方で、TNF-αの産生には影響を与えなかった。次に、マウス耳における炎症試験系における評価では、陽性対象として用いたホルボールエステルTPAの1000倍量までの塗布で有意な炎症惹起作用を示さず、また炎症反応の鍵酵素の1種であるCOX-2の発現には影響を与えなかった。さらに、大腸発がんの短期評価モデルとして知られるラット大腸aberrant crypt foci(ACF)形成試験におけるLAの影響を検討した。発がんイニシエーターとして、アゾキシメタン(AOM)を、発がんプロモーターとしてデキストラン硫酸塩(DSS)を用い、餌に1%のLAを添加して10週間飼育した。その結果、LA投与群では、AOM+DSS群に比べ、体重減少や大腸長の短縮(大腸炎の指標)、さらには肝臓重量の増加が顕著でありLAによる副作用が示唆される結果を得た。しかしその一方で、脾臓重量、腎臓重量、脂肪組織量およびACFの形成に関して、LAはほとんど影響を与えなかった。以上、in vitroではこれまでの知見と同様、いくつかの炎症マーカーの発現を増強し、in vivoでも若干の副作用が観察されたが、決定的な逆作用の解明には至らなかった。従って、LA摂取のリスクをより正確に評価するためにはさらなる検討が必要であると考えられる。
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