Research Abstract |
[目的]本研究の目的は,コリン欠乏アミノ酸(CDAA)食による内因性ラット肝発がん機構への体細胞遺伝子突然変異の関与を検索することである.[方法]実験は,各群雌雄10匹ずつのSprague-Dawley系由来gpt deltaトランスジェニックラット(8週齢)に,基礎食,コリン添加アミノ酸食またはCDAA食を22週間投与し,肝を採取した.肝の一部は,組織学的検索と胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P)陽性前がん病変の免疫組織化学的検索に用いた.肝の残部は,酸化性DNA傷害である8-oxoguanine(8oxoG)のレベルを検索し,gpt assayにより点突然変異を,Spi^-assayにより欠失変異を検出し,変異頻度の算出と変異スペクトルの解析を行った.[結果・考察]雌雄とも,最終体重は群間の差がなく,肝重量はCDAA食群で高値を示し,後者は雄で顕著であった.CDAA食群の肝は,雌で脂肪肝,雄で脂肪肝・肝細胞のアポトーシスと増殖・線維増生による小葉改築を認め,雌雄ともGST-P陽性病変の個数が他群より高値を示した.ただし,全群において,組織学的増殖性病変は観察されず,GST-P陽性病変の数も少数であった.8oxoGレベルは,雄にてCDAA食群が高値を示したが,雌にて群間の差がなかった.体細胞遺伝子変異については,点突然変異・欠失変異のいずれにおいても,変異頻度・変異スペクトルに群間の差がなかった.以上の結果は,CDAA食による内因性肝発がん機構に体細胞遺伝子突然変異の関与しない可能性を示唆するが,Sprague-Dawley系の肝発がん感受性の低さが影響した可能性があるため,来年度に肝発がん感受性の高いFischer344系由来gptdeltaトランスジェニックラットを用いた検索を行う.
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