Research Abstract |
[目的]本研究の目的は,コリン欠乏アミノ酸(CDAA)食による内因性ラット肝発がん機構への体細胞突然変異の関与を検索することである.[前年度成果]体細胞突然変異は,CDAA食による内因性肝発がん機構に関与しない可能性が示唆されたが,動物系統(Sprague-Dawley系)の持つ低感受性の影響を否定できなかった.[本年度方法]動物は,Fischer344系由来のgpt deltaラット(6週齢,雄,各群6匹)を用いた.第1群はコリン添加アミノ酸(CSAA)食を,第2群はCDAA食を,第3および4群はそれぞれ溶媒およびN-nitrosodiethylamine (DEN;1回投与量,体重kg当たり100mg)の週1回計2回腹腔内投与後に基礎食を,いずれも16週間投与して動物を屠殺し,肝を採取して,組織学的変化と,胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ陽性肝前がん病変・肝細胞核8-oxoguanine (8-oxoG;酸化性DNA傷害)・体細胞突然変異の発生を検索した.[本年度成果]肝前がん病変は,第2・4群で有意に発生し,Sprague-Dawley系より高い感受性を示した.8-oxoGレベルは,第2群で有意に高値を示した.体細胞点突然変異頻度は,第1・2・4群が第3群より有意に高値を示した.変異頻度について,第4群平均値は第3群平均値の163.30倍もの有意な高値を示したが,第2群平均値は第1群平均値の1.27倍と高値ながら統計学的有意差がなかった.以上の結果より,食餌中の栄養素組成の変動操作のみで誘導されるコリン欠乏による内因性ラット肝発がん機構において,酸化性ストレスは重要な役割を果すが,体細胞突然変異は関与しないか重要な役割を果さないものと判明した.それに対して,DENによる外因性肝発がん機構においては,体細胞突然変異の果す役割が大きいことが明らかとなった.
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