Research Abstract |
過労死,過労自死,過労障害に被災された本人,またその家族に対して,被災前の慢性疲労状態における睡眠-覚醒条件を検討するために,1回60分-90分の面接を2-3回にわたって行った。面接は,半構造化面接であり,1回目の面接は,主に被災者が健康であった頃の睡眠-覚醒周期を聴取し,2回目の面接は,それが仕事の忙しさとともに,どのように変化したかを聴取した。その際,面接は被災者本人,家族に本調査の趣旨を十分説明し,同意を得て行った。具体的な面接内容は,入眠困難度,中途覚醒度,早朝覚醒度,鼾の有無,寝言の有無,夢見の有無,寝汗の有無,昼寝の有無,入眠に対する努力(睡眠薬,アルコール)の有無等であった。また被災前,1週間,1か月,6か月,1年の範囲でretrospectiveに労働状況と疲労徴候を聴取した。疲労徴候は,行動水準と自覚的疲労感を主に聴取した。行動水準では,日常の会話,入浴の有無,食事時刻など1日単位の行動,外食,洗車,飲酒など休日に行う週単位の行動,散髪,記念日の祝福など月単位の行動の変化に着目した。面接した被災者は,過労死事例4名,過労自死事例6名,過労障害事例3名であった。被災事例全13例のうち,労働災害認定事例は6例であった。過労死・過労障害の死因は,脳疾患が2事例,心臓疾患が5事例であり,過労自死の手段は,投身が3事例,縊頸が2事例,服薬が1事例であった。被災者の職種,被災前の労働条件は多岐にわたった。面接の結果として,まずベッドパートナーであっても被災者の睡眠状況を詳しく説明できないことが多かった。また総じて被災者の睡眠は,短縮傾向にあったが,発症に関しては,短縮直後より,長期の休日,休日直後のように比較的長時間の睡眠がとられている時期に生じている事例が多くみられた。
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