2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16631004
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松田 裕之 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (70190478)
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Keywords | 第一種の過誤 / リオ宣言 / 予防的取り組み / 国際捕鯨委員会 / 化学物質 / 持続可能性 / 環境正義 |
Research Abstract |
予防原則は1992年のリオ宣言第15原則などにおいて国際的に合意され,さまざまな分野の国際条約や合意文書に採用されている.しかし、予防原則自身多義的で,明確な定義がなされていない.そのため,化学物質に対する規制,温室効果ガス排出基準,オゾン層破壊物質規制,低周波電磁界発生の規制,絶滅危惧種選定に関わる基準,内分泌撹乱物質の使用規制、BSE発生防止など,地球温暖化,人の健康および環境・野生生物への影響に関わるさまざまな分野で、予防原則がどのように適用されているかを分担者の間で資料を持ち寄り、討議を重ね、集約した。また、「予防原則の適用基準とその科学的根拠に関する学際的考証」を東京大学海洋研究所と共催し、市民を含めた議論を行った。 その結果、リスクの大きさ(第二種過誤)、影響の重篤さ(ハザード)、影響の及ぶ範囲(地球規模、地域規模、局所的)、不可逆性、因果関係の立証と確からしさ(第一種過誤)、将来の立証性、費用対効果、規制の実現可能性、対策の強制力・自由の侵害性、規制の主体(政府か協議機関かなど)、挙証責任(汚染者側か被害者側か)などを多角的に分析した結果、強制力を伴う対策が可能な場合には予防原則は過剰に適用されるが、協議に基づく場合には費用対効果が重視され、将来の立証性や第一種過誤などが意思決定の際に重視される傾向が見出された。 将来の立証性はもとより、確からしさ(第一種過誤)を適用基準に明確に組み入れたものは少ない。また、規制の主体が予防原則にどう関わるかの基準も明確ではない。いずれにしても、順応的管理(adaptive management,未実証の前提を下に、継続監視を続けながら方策を柔軟に変え、前提自身を検証していくる管理)とリスク管理の理念を取り入れた予防原則の適用基準を構築することの重要性が指摘された。このアイデアは、代表者などが関与する日本生態学会生態系管理専門委員会の「自然再生事業指針(案)」に取り込まれた。
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