Research Abstract |
本研究の目的は,人間の記銘を強化・補助する視覚的提示システムを,ウェアラブルの構成で構築することである.具体的には,ユーザに視野映像記録のカメラと眼鏡搭載ディスプレイ,およびオブジェクト検出用のタグリーダを装着して,ユーザが実世界で行った情報処理的行動,すなわち実世界の様々な物を操作した際の主観映像を記録し,操作直後並びに適切な時点に,その映像を再生(フラッシュバック)することにより,ユーザのオブジェクト操作行動の記銘を支援するシステムの基本原理とそのプロトタイプシステムを開発した.本年は,システムのハードウェアと基本ソフトウェアの構築,モデル実験系の設定,および基礎実験の実施を行った.システムのハードウェアは,コンテクスト検出システム,撮影システム,映像提示システムとして構成した.操作コンテクスト検出システムとして,IC無線タグ(RFID)リーダをユーザの手に取り付け,対象オブジェクトの特定と操作の時間的経過を検出する構成,および加速度・姿勢センサで,手の運動を検出する構成を製作した.撮影システムは,広視野角小型カメラを帽子に取り付け,映像提示システムは眼鏡搭載ディスプレイを用いた.これらのシステムに基づいて,記録した操作映像を効果的に提示するための方法論をモデル実験により検討した.対象オブジェクトの移動再配置操作の記銘再生,およびページイメージパターンの記銘再認の成績を,映像提示手法間において比較した.これらの実験結果より,リハーサルを支援する効果的な映像形態に関して,次の点が明らかとなった.オブジェクトへの接近行動のキーアクションとして,把持と開放の部分を低速再生して強調するとともに,他の部分を高速再生して全体の操作の連続性を保持する映像提示が記憶再生に有効であった.さらに,ページイメージパターンの再認成績では,動画と静止画の提示効果に固有の差異があることが分かった.
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