Research Abstract |
本研究は,複数の個体に対して観測・測定された多変量時系列データや時空間データから有益な情報やパターンを抽出するための新しい統計的分析手法の開発を目指すもので,特に,各個体に対して離散時点で経時的に観測・測定された高次元ベクトルデータを一つの関数で特徴付け,関数化されたデータ集合に基づく回帰モデル,識別・判別関数の構成法,次元圧縮,モデルの推定,モデル評価基準の開発研究を推進することを目的とする.平成17年度は,前年度の研究成果を踏まえて以下のような研究を行った. (1)複雑な非線形構造を内在する離散時点観測データからの情報抽出を目的として,ウェーブレットによる非線形回帰モデリング手法を提案した.ウェーブレットに基づく手法の大きな特徴は,不連続点の存在や曲率の急激な変化など,データ構造の局所的な変動を有効に捉えることができる点にある.提案したウェーブレットを基底関数とする非線形モデリング手法を関数化処理に適用し,ロジスティック判別を融合させることによって複雑現象の解明に有効に機能する判別・識別手法を提唱した.提唱した手法は,シミュレーションおよび音声データの判別問題へ応用して,その汎化能力の高さを立証した.現在,分光スペクトル解析,動作過程の機能異常解析,遺伝子構造データなどへの適用研究中である. (2)個体差を伴う多数の経時的データの多変数関数化処理を適切に行うための方法論について研究した.特に,分析結果に大きく影響するベクトルデータの情報を高効率で含有する関数化の方法について,現象構造を近似するモデル,関数データ集合に基づくモデルの推定,適切なモデル選択の一連のプロセスを総合的に研究中である. (3)昨年度に引き続き,形や立体の関数データ化と高次元関数化データ集合に基づくモデリングの理論・方法論について研究を行い,生命科学の直面する問題に取り組んでいる.
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