2004 Fiscal Year Annual Research Report
筋電信号に基づくヒト静止立位モデルの実時間制御系を用いた運動の計算論
Project/Area Number |
16650064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 泰伸 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (50283734)
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Keywords | 立位制御 / スティフネス制御 / 予測的フィードバック / 計算論敵神経科学 / 実時間制御 / 筋電図 / 粘弾性 / 長期相関 |
Research Abstract |
立位姿勢時の足関節粘弾性は,ヒトの静止立位を維持するには全く不十分である,本研究では,低足関節粘弾性にも関わらずヒトが安定に静止立位を維持・制御できるのは,脳神経系による予測的制御機構が重要な役割を果たしていることを定量的に示した.まず,計算機内に構築した静止立位の筋骨格系モデルを立位時のヒトの筋電信号で実時間制御するタイプの実験システムを構築した.実験系には,計算機内の下肢筋群と立位に対応するヒトの骨格系からなる微分方程式モデルを用いてた.筋モデルの張力はモデルの受動的バネ特性,受動的粘性特性,能動的収縮力で決まる(Hill型モデル).能動的収縮力は,筋電図から実時間で推定したα運動ニューロンの活動度の関数として決定した.この活動度を制御信号として,運動方程式を実時間で積分し,被験者の筋電でモデルの動きを制御した.被験者にはディスプレイ上に表示した計算機内モデルの動揺を視覚的に与え,そのモデルが立位を維持できるように自身の下肢筋電を調節させた.このとき計算機内に構築した筋の粘弾性は,それだけではモデルの立位維持が不可能な値であった.それにも関わらず,被験者は,運動学習の結果,自らの筋電図を予測的に調節することで,視覚によるフィードバックに大きな時間遅れが存在するにも関わらず,下肢筋群の収縮力によって,モデルは立位を維持することが可能となった.学習初期,中期,後期において,被験者自身の姿勢変化および筋電図とモデルの姿勢変化を比較した結果,学習が進行するにつれ被験者自身の姿勢変化,および被験者とモデルの姿勢が長期相関を示すようになることを明らかにした.さらに,姿勢変化の履歴情報に基づいて,被験者はモデルの姿勢変化を予測し,それに基づいてモデルの姿勢を制御していることを示唆する結果を得た.
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