Research Abstract |
体内マイクロロボティクスのアクチュエーション技術として,これまでのカテーテルでは入り込むことのできない体内の微小領域に,単独で入り込みそこで作業が可能な,遠隔制御微小自在変形体(アメーバロボット)を提案している.この微小自在変形体は,体外からの超音波により遠隔的に,アメーバのように大きく自在変形させることが可能であり,形状記憶樹脂膜,音波吸収体(樹脂),および超音波のキャビテーションを応用した気泡発生核からなる. 本年度は,超音波による樹脂の加熱特性を明らかにする為に,各種の樹脂,中空マイクロバルーンを混入した樹脂を加熱ターゲットとして加熱実験を行った.また,超音波の伝播媒質の動粘度によるターゲットの温度上昇の違いについて明らかにした.以下,得られた結果を示す.実験に用いたシリコンゴム,ソルボセイン,ウレタンゲル,スチレンブタジエンゴム,形状記憶樹脂,エポキシ樹脂は超音波照射(80kHz)により,室温から70℃の昇温が得られた.これは,形状記憶樹脂を軟化させるには十分な温度上昇である.さらに,ターゲット樹脂近傍の伝播媒質中(シリコンオイル)で超音波照射により気泡が発生するが,この気泡は高温であり,発生後も超音波を吸収し昇温するとの考察から,ターゲットに中空のマイクロバルーンを混入して実験を行った.マイクロバルーンの混入により気泡の発生しない低出力の超音波でも,ターゲットが昇温ことを確認した.超音波の伝播媒質動粘度の差が,気泡の発生のしやすさ,発生様式,集中度,移動速度,超音波の減衰に依存すると仮定し,推測されるこれらの相関から,昇温に適する伝播媒質の動粘度は10,000cStであることを実験により確認した.一方,粘度が100cStと小さい場合には,気泡発生に有利であることが示された.超音波の周波数を1.6MHzと大きくした場合には,媒質中の気泡発生を抑えつつも温度上昇が可能であること示した.
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