2004 Fiscal Year Annual Research Report
運動時におけるヒトの脳活動と体内ホルモン変化との関係-ポジトロン断層法を用いて-
Project/Area Number |
16650150
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 敏彦 東北大学, 高等教育開発推進センター, 講師 (00229048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正敏 東北大学, サイクロトロンラジオアイソトープセンター, 教授 (00125501)
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Keywords | PET / 遊離脂肪酸 / FDG / 乳酸 / 扁桃核 / 橋網様体 |
Research Abstract |
【目的】本年度の研究ではPETと^<18>F-fluorodeoxyglucose (FDG)を用いて、末梢血中のエネルギー代謝物質と脳活動の関係を調べることであった。【方法】被験者は健康な男子10名であり、運動は55% VO2max強度での50分間の自転車エルゴメータ運動であった。運動開始20分後にFDGが投与された。PET撮影は運動終了15分後に開始した。脳の放射活性を測定する5分間のエミッションスキャンに続き、脳の形態と減弱補正を測定するための3分間のトランスミッションスキャンを行った。脳活動領域の統計的解析はソフトウェアStatistical Parametric Mapping (SPM99)を用いて行った。末梢血中のエネルギー代謝物質として遊離脂肪酸(FFA)と乳酸(La)の濃度を経時的に測定した。【結果】扁桃体の活動とFFA濃度との間に負の相関が認められた。運動時のFFA濃度は有意な増加を示した。橋網様体の活動と運動時の乳酸濃度との間に有意な正の相関が認められた。運動時の乳酸濃度も有意な増加を示した。【考察】怒りや不安、不快感を司る扁桃体の活動がFFA濃度の増加と負の相関を示したことは、運動が情動を改善する一因になる可能性を示唆するものである。乳酸の増加と正の相関を示した橋網様体には橋下部持続的吸息中枢が存在する。乳酸濃度の上昇に伴う化学受容器の求心性の情報が、橋下部持続的吸息中枢を刺激している可能性を示すものである。持続的な吸息中枢の刺激は有酸素運動には有利な作用である。運動時の末梢血中の代謝物質は、中枢神経に末梢の情報を伝える伝達因子であると共に、中枢の制御因子としての働きを持つ可能性が考えられた。
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