2005 Fiscal Year Annual Research Report
運動時におけるヒトの脳活動と体内ホルモン変化との関係-ポジトロン断層法を用いて-
Project/Area Number |
16650150
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 敏彦 東北大学, 高等教育開発推進センター, 講師 (00229048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正敏 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00125501)
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Keywords | 脳 / PET / 運動 / セロトニン / [^<11>C]N-methylspiperone / 遊離トリプトファン |
Research Abstract |
脳神経由来のセロトニンは、覚醒度を上昇させる一方で、攻撃性の減少や疲労感の誘発など様々な情動の変化に関与することが知られている。そこで、本研究の目的は、運動が人間の脳内のセロトニン動態に及ぼす影響を検証した。また脳神経由来のセロトニンの前駆体といわれている動脈血中遊離トリプトファン濃度とセロトニン濃度との相関を観察した。運動によるセロトニン受容体結合能変化はセロトニンのアンタゴニスト[^<11>C]N-methylspiperone (NMSP)とPETを用いて観察した。被験者は4人で、年齢20.75歳、身長171.5cm、体重80.3kg、最大酸素摂取量44.2ml./min/kg(全て平均値)であった。まず安静時のPET撮影を行った。3時間以上の間隔を置き、最大酸素摂取量の70%強度で30分の自転車運動をで行い、運動終了20分目からPET撮影を行った。PET画像は画像解析ソフト(Dr.View)を用いて解析した。被験者4人中3人で、セロトニン受容体結合能の上昇は運動野、後頭葉、尾状核、被殻、海馬、帯状回において認められた。NMSP結合能の上昇はセロトニン分泌の減少を示唆している。また動脈血中遊離トリプトファン濃度とセロトニン濃度が有意に相関する領域は認められなかった。これまで運動後では脳内セロトニンは上昇すると考えられていたが、本研究の結果ではセロトニン濃度が減少する傾向を示した。本研究では方法論上、運動終了20分目からPETの撮影を行った。したがって運動中や運動終了直後とは違ったことが、先行研究と異なる結果になったことが推察される。脳内セロトニン濃度の減少は睡眠の誘発にも関係しており、本研究の被験者がPET撮影時に眠気を訴えたことは非常に興味深い。今後、運動中、および直後におけるセロトニン受容体結合能を観察し、時系列で運動との関係を明らかにすることが重要と考えられる。また動脈血中遊離トリプトファンの上昇は脳内セロトニン濃度の上昇と必ずしも相関していないことが示唆された。
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