2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16650157
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寒川 恒夫 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70179373)
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Keywords | 武術 / 精神文化 / アジア |
Research Abstract |
3年度計画の2年次に当たる本年度は日本とタイを中心とする武術の精神文化研究に当てられた。日本については、岡山の竹内流柔術、和歌山の関口流柔術、名古屋の棒術諸流派について調査をおこなった。また江戸年間の武術諸伝書、明治・大正・昭和における武術関連諸文献によって日本の武術精神文化の典型モデルである「武道」の概念史を明らかにする作業をおこなった。その結果、1)江戸年間の「武道」は今日常識の武道を意味せず、城下に住む官僚たる武士の倫理規範である儒教的「武士道」「士道」の意味に用いられたこと、2)明治において初めて「武道」は"武術稽古を通しての精神修養文化"の意味を得たが、それは日清日露の戦勝以後に天皇に勤仕する臣民の国民道徳として新解釈された忠君愛国武士道を顕現するものであり、かつ外来のスポーツや体育が競技・娯楽・体力を志向するのと違って、武道は日本固有の伝統文化であるとする理解が形成されたこと、3)つまり、今日の武道理解は明治武道から忠君愛国的ナショナリズムの部分が第二次大戦後に切り捨てられたところに成立していることを抽出した。この成果は平成18年度中に論文の形で公表する予定である。また大阪の民族学博物館において東南アジア地域の武術の資料収集をおこなった。さらに、タイについては、バンコク在住の研究協力者にタイの武術(ムエタイ、クラビクラポン、シラット等々)の資料収集を依頼し、成果を得た。近年、ムエタイをタイの伝統文化とみる動きが進行していること、またムエタイを仏教タントラから解釈する試みが着手されていることが注目されている。
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