2005 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期における在村医の地域ネットワークの研究-医療協力・症例研究会を中心に-
Project/Area Number |
16650223
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中川 恵子 (末永 恵子) 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315658)
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Keywords | 在村医 / 地域医療 / 医療ネットワーク / 郷医 / 症例研究会 |
Research Abstract |
本年は、前年度に引き続き在地の史料調査を行い、在村医に関する史料の収集を行った。その史料の中で、特に薬の処方に関する書類である「配剤録」の分析を行った。処方の仕方の傾向、およびひとりあたりの処方の分量やその処方薬の金額をまとめた。 今年購入させていただいた『中薬大辞典』1巻〜4巻+索引(上海科学技術出版社・小学館編、小学館発行)を活用し、処方薬の効能を1点ごとに調べ、患者の羅患した病名を推側しようとこころみた。しかしながら、なかなか処方薬から病名を特定するには至らなかった。 また、並行して東北地方の他の医学関係の文献(主として活字資料)を購入し、他地域の在村医の随想・日記からその医療活動を抽出した。また彼らの持っていた思想を取りまとめる準備をしている。 一方で、本年は勤務校である福島県立医科大学の歴史をまとめた小冊子『福島県立医科大学の歴史』(福島県立医科大学、2005年)の執筆に携わった。福島県立医科大学の前身である医学校の濫觴は、明治初期の白河仮病院内の医学講習所である。このような西洋式病院や医学校を成立させた歴史的な背景の中には、いくつかのことが考えられるが、近世後期の在村がある程度、医療化されていて、庶民による医療の需要が恒常的にあったことが前提となる。 そのようなことも念頭に置きながら、福島県下における医学・医療に関して考察を進め、近世後期の医療が近代の医療とどのように連続しているのか、またどのような過程を経て乖離していくのかを考察することが、今後の課題であることにも思い及んだ。
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