Research Abstract |
大陸に近く,大陸起源汚染物質を良く記録していると考えられる日本海側の離島である島根県隠岐の男池,長崎県壱岐の2箇所の溜池(黒山,大清水)において,長さ約1mの堆積物試料を採取し,堆積物の層相記載,C-137法とPb-210法を用いた年代測定,球状炭化粒子(SCP)・球状灰粒子(IAS)分析,多環芳香族炭化水素(PAHs)分析,重金属元素濃度分析,さらに予察的に珪藻分析を行った.これらの測定と分析は継続中であるが,隠岐男池堆積物研究について進展があった.長さ107cmの男池堆積物コアは均質な泥からなり,Pb-210法による堆積年代は最深部で1890年であった.また,C-137の鉛直変化はそのグローバルフォールアウトの時代変化と良く一致した.このことは,このコアが環境変遷の時系列変動解析に適した試料であることを示している.この堆積物に対する水銀の人為的負荷は1920年代から始まり,堆積物に対するフラックスは1960年代に最大値を示す.それ以降は現在まで一定値で推移する.-方,鉛の人為的負荷量は1930年代に始まり,現在まで増加し続ける.このほか,PAHs濃度も鉛と同様,1930年代から現在まで増加傾向を示す.これらの重金属元素やPAHs濃度の時系列変化は,大阪や琵琶湖での時系列変化と明瞭に異なることから,隠岐における重金属・PAHsなどの人為汚染は,朝鮮半島や中国大陸の影響が大きいことが推察できた.このほか,男池堆積物には,化石燃料燃焼起源と推定できる球状炭化粒子や球状灰粒子が含まれていたことから,これら粒子の歴史トレンド解析を行うことによって,大陸起源汚染物質が具体的に評価できる可能性を得た.なお,珪藻群集に関しては,時代的な変遷は認められなかった.
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