2005 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル高原における草原の砂漠化と草地利用制度に関する計量的研究
Project/Area Number |
16651018
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
鬼木 俊次 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 国際開発領域, 主任研究員 (60289345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
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Keywords | モンゴル / 中国 / 内蒙古自治区 / 牧畜 / 過放牧 / 砂漠化 / 効率性 / DEA |
Research Abstract |
モンゴル高原における家畜の過放牧と草地荒廃の要因に関する計量分析を行うため、本年度は、モンゴル国および中国内モンゴルの過放牧の著しいと言われる地域において牧畜家計調査を行った。都市周辺部の調査地域として,首都のウランバートル市、ダルハンオール県、オルホン県、ボルガン県中部およびそれらの周辺地域を選び、現地調査を行った。また、都市周辺部以外の過放牧地域として、アルハンガイ県東南部およびボルガン県南部で調査を行った。事前調査における家計数は10、無作為抽出標本調査の家計数は合計200である。現地調査およびDEAによる牧畜生産の経済効率性とその要因に関する計量分析により過放牧の主な原因は牧民の地域的な集中にあることが分かった。地域集中には郡や県レベルの地域型移動と、国レベルの広域的移動がある。郡・県レベルの牧民の集中の理由は、教育、医療、ならびに井戸の劣化による草地利用の偏在である。全国レベルでは、西部等の辺境的な地域から中部の大都市付近へ多くの牧民が移住することで、都市付近の放牧圧が高くなっている。その理由は、教育、医療へのアクセスに加えて、地方の市場アクセスの悪化や治安の悪化もある。 内モンゴルの調査地域は,草地の退化の著しいオルドス市である。家計調査のサンプル数は150である。調査の結果、地域の放牧圧は高いが、牧民は自らの草地を効率的に利用するために様々な草地保全活動を行っていることが明らかになった。特に、高木や灌木の植林、牧草や飼料作物の栽培、牧柵による輪換放牧が草地保全と収益確保のために行われている。このうち、飼料作物の栽培や牧柵用の針金のためにかなりの費用がかかるが、こうした活動のために限られた土地で家畜を増やすことが可能となっている。そのため、経済的観点から見れば、牧民自身による草地保全的投資を促すことによってさらに効率性を上げる余地があることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)