2004 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴走査型トンネル顕微鏡による単一スピン検出
Project/Area Number |
16651045
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 先任研究員 (40251326)
|
Keywords | ESR / STM / 単一スピン検出 |
Research Abstract |
本年度は、電子スピン共鳴走査型トンネル顕微鏡法(ESR-STM)による単一スピン検出必要な性能、すなわち高安定性、高剛性、高周波対応、低温超高真空対応を満たすSTMユニットの設計と試作を行うと共に、現有の低温STMの性能向上を図り、ESR-STMと相補的手段であるゼーマン分裂の直接測定によるスピン検出の可能性を探った。 ESR-STMの試作では、STMユニットの剛性をなるべく高く保ったまま、STM探針の粗動を可能にするため、シェアピエゾスタックを順次変形させてピエゾスキャナーケースを移動させる、いわゆるPan typeのユニットを試作したが、これまで用いられているような設計では、粗動の信頼性がピエゾスタックとスキャナーケースの工作精度に著しく依存することがわかった。そこで、シェアピエゾの摺動面を球面として工作精度に因らないような工夫を行い、さらに、剛性と熱的均一性を高めるため、窒化アルミニウムと炭化珪素を構造体に用いた新しいユニットを現在製作中である。本ユニットではセミリジッドケーブルを探針極近傍に接続できるような工夫も行っており、まもなく、安定したESR-STMが遂行できるようになると考えている。 ゼーマン分裂を用いたスピン検出は、磁場によるゼーマンエネルギー以下の温度まで試料を冷却し、局所状態密度スペクトルの磁場依存性からスピンに関する情報を得る手段である。このような冷却手法の確立は安定したESR-STMの実現に有用である。本年度は^3He冷凍機と既存のSTMユニットを組み合わせ、430mKまでの低温でのトンネル分光に成功した。この温度は約0.6Tでのゼーマンエネルギーに相当し、現有の11Tの超伝導磁石によって十分な精度で磁場効果が検討できると考えている。 来年度は双方の手法を組み合わせ、当初の目標である単一スピン検出を行う。
|