2005 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴走査型トンネル顕微鏡による単一スピン検出
Project/Area Number |
16651045
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 先任研究員 (40251326)
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Keywords | ESR / STM / 単一スピン検出 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度試作を行った高安定性、高剛性、高周波対応、低温超高真空対応を満たすSTMユニットを完成させることを目指した。また、電子スピン共鳴走査型トンネル顕微鏡(ESR-STM)をシステムとして完成させるために、低温プローブの設計と製作を行った。 ユニットに関しては、STMの心臓部ともいえる粗動機構の安定化に目処が立ち、液体ヘリウム温度以下の低温でも動作し、機械的共振周波数が5kHzを超える高い剛性を有するSTMユニットを完成させた。現在、本ユニットに同軸ケーブルを組み込むための部品製作を終え、最終的なESR-STMユニットとして組み立てを行っている。 一方、上記ユニットを設置するための低温プローブの設計製作も行った。高周波信号の減衰や、反射による寄生信号の発生を迎えるため、全長が約650mmという、極短い低温超高真空容器を設計した。本プローブは室温部とSTMユニットを繋ぐパイプを備えており、将来、トランスファーロッドを追加することで、超高真空を破らずに試料や探針を搬送することができるような設計となっている。さらに、電子スピン共鳴を誘起するための外部磁場の印加には、プローブと一体化させた、最高磁場0.1Tの小さな超伝導磁石を使用するという新しいデザインを考案し、採用した。超伝導磁石を永久電流モードで運転することによって、系統的な磁場依存性の測定が可能になる。 現在、STMユニット、低温プローブともに組み立て途上であり、年度内に実際のシステム運用にはいたらなかったが、各要素技術は完成されたものとなっており、本装置が、完成すればこれまでに無い高性能ESR-STMとなることは確実である。今後、本装置を利用して、単一スピン検出に役立てたい。
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