2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16652002
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
納富 信留 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (50294848)
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Keywords | ギリシア哲学 / ソクラテス / ゴルギアス / プラトン / ソフィスト / 哲学史 / ソクラテス文学 / アイスキネス |
Research Abstract |
本研究は、西洋古代哲学史について従来の見方の問題点を検討し、新たな枠組みの構築に着手した。平成16年度には、まず紀元前5世紀から4世紀(ギリシア古典期)の変化を「ソクラテスの同時代」と「ソクラテス文学の時代」という区分から検討した。この時代に展開された知的運動それぞれの特徴と、思想家たち相互の論争や対抗関係を詳細に考察した。その際、これまで中心とされたプラトン対話篇だけでなく、その周辺の思想家たちの作品、断片などに注目し、そこから時代思想の全体像を浮かび上がらせることを目指した。主な研究成果は二点ある。 第一に、2004年7月にドイツ・ヴュルツブルク大学で開催された第七回国際プラトン学会において"Plato on Power and the Other : the critique of Gorgias"という発表を行なった。そこでは、ソフィスト・ゴルギアスが『ヘレネ頌』で展開した言語観に対して、プラトンが対話篇『ゴルギアス』で直接応答している様を明らかにし、前4世紀初めの哲学と弁論との対立と葛藤を検討した。第二に、「ソクラテス文学」について残存する断片や間接証言から包括的な調査を行い、その全体像を『哲学者の誕生-ソクラテスをめぐる人々』(ちくま新書、2005年出版予定)にまとめた。その中では、アイスキネス断片(本邦初訳)を検討するなど、新たな視点からの哲学史構築を試みた。 これらの成果をつうじて、主に前4世紀初めの転換を焦点に、ギリシア古典期の知的活況を明らかにした。
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Research Products
(2 results)